司法試験合格者の増員問題

医師とは逆で司法に関しては「政府が増加したい」と言っているのに対し、法曹はどちらかというと反対しているみたいです。
弁護士人口に関する意見書

弁護士も医師もと内向きの産業(トラブルを解消するとか、病気を回復するとか、重要だが新たなものを生み出すわけではないという意味)の担い手なので、基本的には社会が困窮しない限りは人員抑制の方向が正しいかと思います。前の研究室のボスがよく言っていたことですが、「優秀なやつは研究や企業で開発を行うべきだ。ベンチャーを立ち上げてもらってもいいし、村上ファンドのようなことをしてもいい。むしろ、そうしないと日本の活力が失われる。医学部でも上位10人〜20人は研究してもらいたい」

鳩山法相は司法試験合格者が3000人になることについて「多すぎる」と明言しました。よく踏み込んで言っているなぁと思います。

法曹には企業就職という手がありますが、医師は閉鎖的な医師社会で長年生きてきているので、増えすぎたときは簡単に転職してね、というわけにはいきません。だいたい、35歳ぐらいを越えると医師以外の職業はほぼ出来なくなると言います。弾力性が非常に低い職業です。しかも養成には時間がかかる。したがって、不足したらなかなか増やせないし、増えすぎたらなかなか減らせない。そもそもの考え方として、医師数の増減で医療の需給を調整するのではなく、医療従事者の役割分担を臨機応変に変え、より弾力性が高く教育期間も短くて済む医療補助者を必要に応じて増員、減員していくという方向にしていかなければ予測が難しいマクロバランスの失敗をいつまでも繰り返すことになるでしょう。

役割分担の見直しには厚労省の政策誘導も必要ですが現場レベルでの意識改革も必要です。かつて救急救命士が訓練を受けた上で気管内挿管を行ってもいいかで政府と医師会が対立しましたが、こういう意識が残っていては見直しはほとんど不可能に近い。助産師と産科医の問題にしても、ちゃんとした助産師も多いにもかかわらず、かつての歴史を引きずり医療崩壊の今になっても無駄な対立が続いています。霞ヶ関で産科の問題がやっかい者扱いされるのはそういう側面も少なからずあると思います。

医師の閉鎖的・職業ギルド的体質というのは国民、官僚だけではなく多くの医学生からも指摘されて忌み嫌われています。私なんかは医療家系であることもあって「ある程度はしょうがないんじゃない?」と言ってますが、中には「医者って本当に職業バカでわがままだから」と言っている人も結構います。
確かに多くの人が指摘するように、社会が不景気でリストラの波にさらされているとき医療界は多少の診療報酬下げはあるにせよ、ほとんど影響を受けてきませんでした(だからこそ医学部人気が高まっているわけですが)。しかし、この世の中そこまで甘くはない。

医療が数年前に多くの人々が経験した社会の変革の波を遅れながら受けるのはほぼ宿命であり、今の医療を取り巻く状況はまさにその過渡期に起こっている現象であると解釈することが出来ます。ある意味、日本の医療が一度崩壊するのは大きな時代の流れの一つとして当然のことと言えます。その中(いわゆる焼け野原)からどうやって新しい医療を組み立てていくのか、地方医療に対してどういうビジョンを持って望むのか、国民の意見も踏まえつつ医療界が率先し、一丸となって考え直していかなければなりません。

医療崩壊厚生労働省や法曹が主となる問題ではありません。あくまで医療界が主となるべき問題です。医療の問題なのですから。厚労省や法曹に何かを求めるだけでなく、医療界自体が今までの自分たちを見直し、自分たちが今後どういう医療を提供したいのか、様々な制約の中でどうやって効率化を図っていくのか、そういうビジョンを自発的にかつ統一的に打ち出していけば、おのずと厚労省も法曹も警察も国民もこの動きに協力してくれるでしょう。そういう姿勢がなく、ただ「医療費を上げろ」「医師を増やせ」「医療裁判なくせ」と要求するだけでは厚労省にも法曹にも国民にもそっぽを向かれるだけです。ある意味、これは医療界に与えられた試練だと私は考えています。この問題を医療界全体でどうやって乗り越えていくか、日本の医師や医療従事者の真の力が問われていると思います。

与謝野大臣、いままでの大臣とは違う

財政規律維持しなければ経済に悪影響=官房長官
非常に立派な発言をされていると思います。今までのその場限りの姿勢の大臣と比べると本当に日本のことを考えているなということがひしひしと伝わってきました。こういう政治家が沢山いればもっとよいのになぁと思います。