読書記録
裁判員制度特集というわけではありませんが、司法・治安系の本を借りてきました。
- 作者: 河合幹雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/08/26
- メディア: 単行本
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直接の関係はありませんが、心理的な側面においても自他の「境界」が脆弱になると、精神的に問題を来したりすることがあります。箱庭療法では必ず枠があり、その枠を侵襲するような景色が構成されると、自我の境界に問題があるというようなことがいわれますが、著者の指摘とどこか類似性を感じますね。ちなみに著者は河合幹雄氏。箱庭療法やユング心理学で有名な河合隼雄氏の息子だそうです。そう考えると、著者が「境界」に着目した理由も納得できるような気がします。
- 作者: 今枝仁
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2008/04/03
- メディア: 単行本
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私は、一般的に社会的弱者に注目できるようになるためには、自身が何らかの形で弱者の経験を持ったり、弱者と親密な関係にあるということが大事だと思っています。特に学生時代にpsychologicalな問題を抱えたり、そういう友を持つというのは、いい経験かもしれない。少なくとも楽しくワイワイ過ごしただけの経験よりかは、何か深いものが得られていると思います。
なお、テレビで騒がれた「ドラえもん」騒動ですが、この著書を読むと幾分か理解ができます。彼にとって押入はドラえもんそのものだったのかもしれない。私も小中学生時代の経験から「押入」には特別な思いがありますが(思考が混乱した時や深い悲しみに暮れたい時は、ドラえもんのように暗くて静かな押入に隠れて一時間ぐらいじっとしているのが日常でした。さすがに今は体重が重いので押入に登ることはありません)、彼にとっても押入は何かの象徴だったのかもしれません。
私は彼の著作を読んで改めて思いますが、あの事件に関しては死刑にすべきでないと考えています。事件は起こしたといえども、彼自身が相当な弱者であったことが推測されるからです。父親からの虐待・家庭内暴力、母親の自殺、周囲からの孤立、解離や退行とも捉えられる行動・・・彼の心理状態はどう推移していったのか、そしてそういう彼に「育ち」を経験させることにより更生が可能なのか、それを調べるためにも彼には生きていて欲しいと思います。それでも更生できなければ被害者感情も考慮に入れて死刑でも構わないとは思いますがね。
死刑にも(更生することを条件に)執行猶予付きの判決があればいいのに、と思う次第です。
あと、救急で実習した時に思ったことですが、薬物とか犯罪に手を出す人々というのはどこか弱い面を抱えていることが多い。犯罪者=どうしようもない野獣、というようなステレオタイプはやめた方がいいと思います。そういう人もいることはいますが、決してそういう人ばかりでもないのです。