画期的な報告

福知山線事故、「日勤教育」要因に…事故調が最終報告へ
通常ならばなかなか踏み込めないような領域まで踏み込んだ画期的な報告書だと思いますね。こういう心理要素って確定的なことはいえないので、公式の報告書に織り込まれることは少ないのですが、今回は事の重大さをみて踏み込んだということでしょうか。

僕自身がなによりも画期的というか意外だなぁと思ったのが「無線連絡の制限」ですね。運行に関係ない連絡はできるだけしないようにということのようです。確かにオーバーランでは基本的にこの3つのことが伝われば十分です。

  1. 駅の(乗降可能)ホームの先端をオーバーしたか
  2. 先端ホームより内方の信号機(出発信号機又は閉塞信号機)をオーバーしたか
  3. 踏切など地上設備に異常が生じたり、危険がないか

駅のホームをオーバーしないのであれば、(駅の途中にポイントがあって本来そこで分岐すべきだったというのなら別ですが)、基本的にはそのままドアを開閉するだけでも可能です。もちろん、距離が長い場合は戻る必要性が生じますが。
先端ホームより内方の信号機をオーバーせず、地上設備に危険が生じないのであれば、バックによって戻って位置を訂正することが可能です。信号機をオーバーしてしまえば、戻ることは規則上も安全上も許されにくいので、ダイヤが詰まっている場合などは通過措置を取ることになります。

今回はオーバーランを何メートルに過少申告するかということが問題になったようですが、メートル数は運行上はそこまで重要ではないんですよね。むしろ信号機を越えたか越えてないかで処置が分かれるので、たとえ5mのオーバーランであっても信号機を越えればバックはしづらいですし、100mオーバーランしてもホームに全列車長が収まっているのならそのままドアを開閉しても(乗客は大変ですが)問題はないでしょうね。いろいろ内規はあるんでしょうが。

追記:
鉄道事故調の事故調査報告書案から高見運転士が16年6月に受けた日勤教育のレポート項目を転記します。経緯ですが、直前に別の運転士が片町線下狛駅で指令に無断で列車を後退させた事件があった直後に、高見運転士が下狛駅でオーバーランを起こし、指令との連絡の上で後退させた件。
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6月10日

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  • 今後、注意喚起を受けた後の捉え方

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6月23日

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6月25日

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