大淀病院公判始まる

病院側「産科医療全体の問題」と反論 奈良妊婦死亡訴訟
本当はこのブログでも例の統一スローガンを掲示したかったのですが、夏の某省某局のことを意識して立場上、今回は控えさせていただきます。あまり目立ちたくないので・・・。

しかし、私もあの遺族は変な会に騙されてとんでもない方向に行っているような気がします。JRの事故などとは違って遺族が1家族になってしまうので、彼を利用とする連中(まぁいわずもがなですが、「陣痛促進剤云々の会」ですね)に騙されて方向を誤ってしまうのも当然なのかもしれませんが、叩くところが間違っているように感じます。

あの遺族が言っていることに少し反論させてもらいますが、人間は寝なければ仕事が出来ません。排便、食事と同様に人間の正常なる活動に必須の生理現象です。医師が寝ていたのが不満だというなら、なぜ医師が寝なければいけないような状態になっていたのかを追究するのが先決であって、旧日本軍のように精神論を無理やり押し付けるような行動をしていたのでは何も問題は解決しません。大敗北を喫するだけでしょう。

世の中には寝なければ持ち前の優秀な能力を発揮できない人がいる一方で、ごく稀に寝ても寝なくてもコンスタントに普通の仕事を続けられる人もいます。それは人それぞれの体質であって、責任感などの精神論で片付けられる問題ではない。そういう体質なのですから。それを精神論で片付けようとするならば、近年のライフサイエンスの知識からしてそれこそ最大の詭弁であるといえましょう。特に医療は僅かなミスが重大な結果を生み出します。それゆえに労働環境はよっぽど特異な体質でない限りは、95%の普通の人が安心して働ける環境でなければなりません。緊急の業務中にすら寝なければやっていけない労働環境そのものが論外です。その当然の労働環境が整えられていない今の体制の下に、普通の医師に超人的な能力を期待する方が間違いだとはっきりと言っておきます。
幻想にうぬぼれるな。俯瞰的に見よ
それだけは奈良事件の遺族に対して強く申し上げておきたいことです。

もう少し異業種の事故についても研究してください。多様な事故の研究なくして事故の責任だけを追及するのはまるで意味のないことです。私は感情を抑えて自ら事故の原因を研究し、そして個人追究ではなくシステム全体に潜む危険性に気付いてそれを修正しようとする活動を粘り強く行ってきた事故遺族を見て心からの尊敬の念と同時に再発防止の重要性を強く感じました。私は奈良事件の遺族がいち早くこのことに気付き、私が尊敬の念を感じられるような遺族になっていただくことだけを望んでいます。それが遺族の方が本当に望んでいること、すなわち「奈良県のお産の安全の確保」を実現できる唯一の道なのですから。