複雑な心境

<診療科名削減>厚労省が見直し案を白紙撤回 学会が猛反発

医療機関が掲げることができる診療科名を巡り、厚生労働省が「患者に分かりやすい表記を目指す」として、今年5月に公表した基本診療科名を38から26に4割削減する見直し案について、同省が事実上白紙撤回していたことが分かった。削減される診療科を専門とする学会が一斉に批判、他の学会も「現場に何の相談もなかった」と反発を強めたからだ。同省は打開策として現在の診療科名の使用を容認する案を各学会に打診したが、患者にとって分かりやすい表記になるかは不透明だ。【北川仁士】
 診療科として表記できるのは医療法に基づき33の医科と四つの歯科、それに厚労相の許可を受けた麻酔科の計38科。現在は医師であれば自分の専門とは関係なく、どの科の看板を掲げても自由(麻酔科を除く)。患者集めを目的に複数の科を掲げて広告を出す診療所なども目立つようになり、患者から「何か専門が分かりにくい」との苦情が同省などに寄せられている。
 こうした状況を解消するため、同省は5月21日の医道審議会・診療科名標榜部会に見直し案を公表した。内科や外科など基本的な診療科を残し、より専門的な治療内容を表記する診療科は削減するのが基本。診療科として標ぼうできるの科を26に絞ったうえで、「ペインクリニック(痛み緩和)」や「花粉症」など得意分野の治療方法を「サブスペシャリティー」(専門性の高い領域)として診療科の下に自由に書き込めるよう“緩和”した。
 しかし、診療科から外された学会や患者団体から見直しを求める要望が続出。その一つ、日本神経学会は「やっと定着したのに。パーキンソン病やALSなど関連患者団体からも『これからどこに診療にいけばいいのか』と不安が寄せられている」と指摘。
 同学会のある幹部は「さまざまな名称の専門医が雨後のたけのこのようにあふれ、わかりにくいのは事実。しかし、医療の中で神経内科は重い責任を果たしており、削減されるのはおかしい」と、総論賛成各論反対の姿勢だ。
 厚労省は「基本診療科の下に自由表記できるという緩和面の趣旨がうまく伝わらなかった」として、先月、基本診療科名をほぼ従来通り表記できる“妥協案” を水面下で各学会に打診した。しかし、同省が「専門性は自由に表記できる」としているため、専門家からは「広告などで無制限に診療内容を羅列する医師が出てくる恐れがあり、今以上に患者にとって分かりにくくなってしまうのでは」との指摘が出ている。
 医事評論家、水野肇さんの話 診療科名の見直しは正直、何のためにやっているのか理解できない。優先順位から言えば他に産科・小児科の医師不足など、今すぐにやらなければいけない課題は山積している。本当に必要と思うなら、専門家の意見も突っぱねてでもやるべきだが、厚労省の対応はふらふらして自信がないように映る。

なんというか、色々あって僕にとっては非常に複雑な心境です。一つ言いたいのは、こんなこの世界株安の時期に重要でもないことを一面のトップに据える毎日新聞は一体何を考えているのかと。厚労省の政策のプライオリティが間違っているといいたいなら、こんな下らないニュースをトップ面に載せる自らのプライオリティはどうなんだと。もっと大事なニュースがあるだろうが、と言いたくなるわけですが。
で、あの問題。そもそも、学会の誤解というかマスコミの偏向報道による学会の過剰反発というのが大きいわけです。しかも、どこの学会も緊急声明ではもっともらしいことを書いていますが、結局ホンネで言いたいことは「歴史と伝統ある〜科学会としては、〜科という標榜診療科が無くされるのは我々のアイデンティティとプライドを奪い取るようなものだ」ということであって、まさに学会の権威のために反発しているといっても過言ではありません。でも、医療法上ではあくまで〜科というのは標榜しているだけであって、〜科の医者という法的なものがいるわけではない(麻酔科を標榜するには厚労相の許可が必要です)。〜科の医者という認定制度があると思っている人がいたら、間違いだと教えてあげてください。むかしトリビアでやってましたよね「医師免許があれば麻酔科以外はどの科でも勝手に名乗れる(54へえ)」って。基本的に医師は質のばらつきや、時代にあった適切な治療法が取れるかという問題は別にして、とりあえずある程度一通り最低限の医学的診療は分かっていなさいよ、というのが法律としては趣旨になっているわけです。これが時代遅れであるとか、実態に合っていないという指摘はあるんですけれどもね。したがって、原則論で言えば現行で認められている標榜診療科の基本診療科としての存続にそこまでこだわる必要はまずないわけです。規制緩和で、自分の本当の「科」だとか得意な分野は書きたいように書けるので。

ところが、その科の医師にとっては〜科というのは、学会と同じくまさに自分のアイデンティティであり、最近の防衛医療では非常に有効な逃げ道なんですね。〜科だからちょっと違う〜科は診れません、と。だから、標榜診療科の削減に強く反発したわけです。実のところ、そこが今の医療の問題点でもあるんですけれどもね。専門分化の傾向というのが今後の医療の持続可能性を考えると果たしてよいのか。それを医療側は仕方がないというけれども、逃げ道になっていないか。医師のプロフェッショナリズムの喪失の象徴となっていないか。

どれもこれも難しい問題です。あの問題を担当している技官の方(とても親切な方です)に一番よくお世話になったので、ちょっと心が痛みます。大変だなぁ・・・。まぁ、でも保険局なんかで注目される改定に携わると「この人でなし」「お前、本当に医師免許持ってるのか?」という罵声の連続で、官邸まで呼び出されたりしてもっと大変みたいですが・・・。

はっきり言って患者も医者も、学会もなんだかんだいってみ〜んな自分勝手なんですよ。結局はね。