結局誰が得をしたのか
国債発行残高は恐ろしい額になっているわけですが、国債を発行して歳出を大きくするということが一体どういうことなのか、かなり緻密さにかけるところはあるのですが、おおざっぱに説明してみたいと思います。
まず、前提として国債の95%は日本の金融機関や機関投資家、個人が所有しています。金融機関が国債を買う原資はその多くが銀行の預金であったり、利用者から徴収した保険料であったりするわけです。したがって、金融機関の持分も実質は国民、特に銀行や保険会社などに多額の金を入れている富裕層の持ち物であると解釈することが出来ます。国債の債権は日本の富裕層が持っているのです。
で、国債を発行して政府は何にそれを使っているか・・・橋や道路と言ったインフラの中で何十年経っても便利に使えるようなものであれば、それは子孫に対する投資をしたことになります。しかし、何十年先には誰も通るヒトもいないような橋や道路であれば、それはカネをドブにすてたものと同じようなものです。同様に社会保障について考えてみます。老人が現役時代に積み立てた額(とその利息)以上の年金を老人に支払うと政府から新たに老人の家計に金が横流れすることになります。国債による日本政府の負債は日本の老人の資産へと化けているのです。
大雑把だと批判を受けそうですが、結論。
国債発行の問題点は日本政府は国債という債務を負うと同時に、その分が日本の老人富裕層の資産として化けているという不思議な現象にある。しかも富裕層の老人たちの中には自分たちが作った借金で得た資産にもかかわらず、その資産を海外で使い倒して子孫に残さないでおこうとするものすらいる。国債は将来の世代がいずれ返さなければならないものであるがゆえに、これはまさに老人富裕層が将来の世代に二重のツケを残しているのである。
さらに国債には利息が発生する。この利息の支払いは納税者からの税金や新たな国債発行をもって補われている。国債を買えるのは基本的に富裕層であるから、税金を使って国債の利息がまかなわれているということは、非富裕層から富裕層への再分配が行われていることに他ならない。格差の拡大が国債の発行によってもたらされることになる。
貧しい若者→富める老人
この大きなカネの流れと格差の拡大は国債発行を抑制しない限りはおさまることはないだろう。
私は日本の財政再建と格差の是正のためにいくつかの提言をしたい
- 3億円を越えるような多額の資産を持つ高齢者に対しては金利程度の資産税を設ける
- 年収1億を越えるような高所得者の所得税の税率を80%近くまで引き上げる
- 再分配効果の低い消費税は据え置きにする
- 日本の経済増進のため法人税は他の先進諸国並に減税する
- 相続税の控除額は据え置くが、税率を上げる
- 高齢者の医療を保険形式ではなく、独立採算制の税負担方式に変更すると同時に、同じ治療内容であっても保有資産や所得に応じて額を調節し、これらをすべて税金として強力に徴収する。支払わない場合は資産差し押さえも含めた処置を取る。この措置により、基本的には高齢者の医療費は高齢者同士で融通してもらうことにする。
- 新たな財源によって得た税収は国債の償還及び貧困層の医療費にあてて無保険者をなくす。
- 少子高齢化に備えて地方へのインフラ投資を極力抑え、都市に積極的に設備投資を行う
最後の項目について補足をしておきますと、少子化という流れをきちんと見ると、地方や僻地を重視する必要性は全くないことが分かります。もちろん、地方でも県庁所在地と言った中核都市に対してはより積極的にインフラ投資をして、多極分散化をすることが必要でしょう。しかし、高齢化も進み、人口密度が非常に低いような地域に対してこれ以上のインフラ投資をすることは、国債という将来の子孫に残したツケで得た金をドブに捨てるのと全く同じことです。何十年先の日本人はそのインフラを使わないでしょうからね。均衡ある国土の発展は明らかに間違った政策です。貧困層と富裕層の格差の是正は必要ですが、地方と都市の格差の是正は全く必要ありません。不満があれば都市に移住すればいい。別に遠く離れた東京や大阪といった大都会にくる必要はありません。近くの地方中核都市に行けばいいのです。その準備として大都市や地方中核都市には積極的なインフラ投資が必要です。いままでがおかしかったのです。人が少ない地方にそれに見合わないほどの多額の投資をしていたのです。
自民党の総裁選、見ていると「地方への配慮」ばかりが強調されています。これが「地方中核都市への配慮」であれば文句はないのですが、どうしようもない過疎地域に配慮するとなれば自民党はさらに将来に対するツケを増やす政治をしていることになります。もともと、参院選というのは一票の格差が大きいのが特徴です。地方の不満は増幅されて結果に出やすい。そのことをきちんと認識しておかないと、地方を救って国自体がつぶれるという全く本末転倒なことになりかねません。もう一度言います。