国会会議録検索システム
国会には便利なことにネット上から会議録が検索できるシステムがあります(昔の膨大なデータを電子化した人には尊敬の念を感じます)。
検索できる内容は本会議や各委員会での議論が中心です。だいたい、多少のずれはあるにしろ、国会で論戦となるような重要な政策案件については検索キーワードによく引っかかってくるはずですよね。
ということで平成14年〜19年の5年間で各種のキーワードが何件出てくるかを調べてみました。
「サブプライム」・・・・3件(うち本会議0件)
「スペースシャトル コロンビア」・・・・10件(うち本会議5件)
「ネットカフェ難民」・・・・12件(うち本会議3件)
「サブカル」・・・・14件(うち本会議2件)
「年金 横領」・・・・16件(うち本会議3件)
「医療崩壊」・・・・19件(うち本会議4件)
「人生いろいろ」・・・・20件(うち本会議8件)
「十勝沖地震」・・・・36件(うち本会議3件)
「ヘッジファンド」・・・・41件(うち本会議3件)
「ホワイトカラーエグゼンプション」・・・・43件(うち本会議8件)
「医療ミス」・・・・64件(うち本会議6件)
「皇室典範」・・・・66件(うち本会議9件)
「村上ファンド」・・・・74件(うち本会議7件)
「医療安全」・・・・76件(うち本会議5件)
「緑資源機構」・・・・78件(うち本会議11件)
「公的資金注入」・・・・80件(うち本会議10件)
「日経平均」・・・・80件(うち本会議9件)
「新型インフルエンザ」・・・・80件(うち本会議13件)
「住民基本台帳ネットワーク」・・・・80件(うち本会議10件)
「おれおれ詐欺」・・・・80件(うち本会議3件)
「雪印」・・・・91件(うち本会議7件)
「混合診療」・・・・93件(うち本会議8件)
「臓器移植」・・・・100件(うち本会議2件)
「脱線事故」・・・・102件(うち本会議13件)
「技術立国」・・・・110件(うち本会議7件)
「道路公団民営化」・・・・112件(うち本会議23件)
「療養病床」・・・・113件(うち本会議6件)
「自衛隊 給油」・・・・124件(うち本会議18件)
「過剰収容」・・・・126件(うち本会議10件)
「財政危機」・・・・140件(うち本会議19件)
「耐震偽装」・・・・146件(うち本会議14件)
「医師不足」・・・・156件(うち本会議18件)
「基地問題」・・・・181件(うち本会議16件)
「過労死」・・・・196件(うち本会議27件)
「不法滞在」・・・・197件(うち本会議18件)
「SARS」・・・・218件(うち本会議15件)
「不審船」・・・・229件(うち本会議17件)
「政治と金」・・・・230件(うち本会議53件)
「ライブドア」・・・・235件(うち本会議26件)
「格差社会」・・・・244件(うち本会議37件)
「国債 発行額」・・・・245件(うち本会議63件)
「裁判員制度」・・・・249件(うち本会議27件)
「定率減税」・・・・289件(うち本会議57件)
「医療制度改革」・・・・299件(うち本会議48件)
「貸しはがし」・・・・310件(うち本会議45件)
「道州制」・・・・316件(うち本会議44件)
「官製談合」・・・・339件(うち本会議56件)
「同時多発テロ」・・・・342件(うち本会議51件)
「財政赤字」・・・・346件(うち本会議40件)
「公務員制度改革」・・・・383件(うち本会議58件)
「プライマリーバランス」・・・・398件(うち本会議61件)
「マニフェスト」・・・・430件(うち本会議55件)
「イラク戦争」・・・・569件(うち本会議84件)
「郵政民営化」・・・・608件(うち本会議95件)
「骨太」・・・・685件(うち本会議51件)
「拉致 北朝鮮」・・・・794件(うち本会議113件)
昔、グーグルかなんかで検索してヒット数が何件出てくるかというので、競っていた人々がいたみたいですが、国会会議録でそれをやってみても面白いかもしれません。
とかく、思うのは財政、防衛、外務、経済の問題に比べたら医療って本当に小さな領域なのだな、ということでしょうか。医師不足よりかは不審船の方が重要な問題なんですね。
まぁ、国としてやるべき最低限の仕事というのはさまざまな歴史から見ても
- 徴税
- 外交
- 防衛
- 治安維持・裁定
- 産業振興
ぐらいですからね。となると、財務省、外務省、防衛省、警察庁、検察庁、経産省、国交省ぐらいしか必要がないと。それ以外は基本はオプションなわけですね。実際、「小さな政府」は「夜警国家」とも言われるぐらいで、まぁ19世紀の政府というのはこういう方針を採ることが多かったわけです。財閥ができて、労働者を使い捨てにするような近代国家がまさにそれですね。
世界大恐慌や第二次世界大戦以来、「市場の失敗」「市場の破綻」が叫ばれるようになって世界は福祉国家の流れに入ります。その中で日本も国民皆保険制度が導入されて、年金も充実されてきたわけです。しかし、福祉国家というのは大きな政府ですから、どうしても行政国家になってしまいます。このような国家は経済が成長する中では成り立つことが出来ましたが、オイルショック以降の経済成長が鈍化する社会では成り立たなくなっていったわけです。特にスタグフレーションが現れてからは「大きな政府」であることが経済の自由な活動を妨げているのではないか、という論調になっていきます。そこで、1980年代頃からまた小さな政府路線に転換していくことになりました。日本では90年代以降の不況の影響もあってあまり進まなかったのですが、サッチャリズムとかなんとかで海外では急速に小さな政府化が進められていきました。日本も小泉内閣以降は小さな政府化が進んでいます。その中で公務員を減らし、市場に任せるものは任せよう、行政国家からの転換を図ろうという動きが強まっているわけです。
(したがって日本が福祉国家でないという議論は大きな目で見れば間違いです。アメリカもメディケアなどがありますから、ぎりぎり福祉国家のラインには入ると思います)
さて、世間一般によくよく言えることですが、物事の本質をよく理解しないままマスコミのキャンペーンに乗っかってしまう輩が上流階級、下流階級を問わず多いという問題があります。特にここ最近は官僚バッシングというものが流行しているわけですが、
「経済成長の鈍化する中では、経済成長社会下ではうまく機能していた官僚主体の行政国家の弊害がより大きく目立つことになった」
ということが官僚バッシングの根本にあるわけで、役人そのものが悪いというわけではないということを認識する必要があるかと思います。今のような経済状態、社会状態では高度分化し、縦割りの官僚制には問題があるというだけであって、官僚がとんでもない奴らだという考えは完全な誤りです(それは実際に職場に行けば分かる。みんな普通の人ですよ)。むしろ、「官僚制に問題がある」ということを言いたいがためにあっちこっちから政治家とかマスコミがスキャンダルを拾ってきてはそういうイメージを植えつけようとしているというのが実際のところでしょうか。
まぁとかく、今の流れを見る限り「時代に合わない官僚制」は改革されていくということにほぼ間違いはないと思います。ところが、官僚はその辺の流れをよく分かっているのですが、国民はいまだにその流れをよく分かっていない。おんぶだっこのお上意識が丸出しのままで、ムカつくから批判だけしていればいいというような人々が多いわけですね。まぁ、結果としてそれが行政国家の解体につながるからいいという指摘はもっともな話ですが、じゃあ実際にそれで官僚制が縮小していったときに、国民がいわゆる「おんぶだっこ」の意識のまま、ぱっと荒野に放り出されて国家や国民生活を支えていけるのかという問題があります。私は官僚制の縮小自体には反対していませんが、この点を一番心配しているわけです。
たとえば、「医療がうまく行かなかったのは官僚のせいだ。厚労省はなんとかしろ」とおっしゃる医師が沢山いるわけですが、前半部文は医師会の活動や医療の高度化の影響など反論できる要素は色々ありますが、ここでは許容することとします。彼らいわく、官僚ではダメなのだと。では、後半部分。「厚労省はなんとかしろ」というのは完全に「おんぶだっこ」の意識だと思いませんか?これはまさに、お上が何か対策を採れば今の状況は打開できると考えている証拠です。官僚制度・行政国家がだめだと言っていて、官僚に対策を丸投げするようでは全く矛盾した行動としかいいようがありません。官僚制度・行政国家・大きな政府がダメだと思うのなら、官僚制度をなくして市場原理に基づいて医療が行えるように政治家に働きかければいいわけです。逆に官僚に何かを頼んで医療をなんとかしてもらいたいのなら、官僚制度や行政国家を支持すべきであって官僚制度を批判するべきではないですよね。最低限、頼む相手である厚労省の、霞ヶ関での立場を弱めるようなことはすべきではない。
もちろん、丸投げではない、具体的な提言は出しているという方もおられることでしょう。しかし、その提言はせいぜい「〜して欲しい」という程度のもので、その財源をどこから引っ張ってくるかとか、それに国民や他の利害関係者は納得する見込みがあるかとか、実際に法案が国会で成立することになるのか、そういう官僚たちがやっている仕事まできちんと見据えて議論できていないものが多い。「おんぶだっこ」意識から脱却するというのは、そこまで議論できるということが求められているのです。少なくとも業界レベルでそういうことを議論できることが求められている。最終的には官僚がやっている仕事を国民や政治家に渡す・・・それが「行政国家の解体」であるわけですから。
もしかしたら、逆に官僚たちが公務員制度改革に対してかなり強気で抵抗してくるのは、国民がおんぶだっこ意識を引きずっている、最後は官僚に泣きついてくるということを分かっているからかもしれません。だとすれば、「厚労省はなんとかしろ」という発言自体が、官僚たちに「結局は文句を言うだけで、自分では何も出来ないんだろ?」と思わせている可能性すらあることになります。やはり国民の意識が変わることが一番大事だと思います。