肝心な問題はATS-Pではない

JR西元幹部の捜査が大詰めを迎えているみたいですが、それは警察権力のことなのでタッチしないことにして、新聞記事や事故調報告、現JR社長も言っている「ATS-P(新型ATS)を設置していれば事故は防げた」という表現に関して。

当時、福知山線は尼崎以北はすべてATS-SWというJR西日本向けに改良されたATS-Sを導入していました。新聞も現社長も「ATS-Pを設置していれば事故は防げた」と指摘していますが、実は当時設置されていたATS-SW(旧型ATS)でもカーブにおける大幅な速度超過は十分防げるんですね。カーブ手前に2個の特殊な地上子さえ設置していれば。

仕組みとしては単純で、2つの地上子間を一定秒数(通常0.5秒)以内に通過したら非常ブレーキがかかる仕組みです。事故当時、実際に西日本エリアでも分岐器やカーブでの速度超過防止を目的として、このタイプの地上子が設置されていた箇所も数多くありました。ただ、JR西があの現場には地上子を設置していなかった、より正確に言うと、社内の設置基準に現場のカーブが入っていなかったために、あの事故は防げなかったわけです。その点で、「新型ATSさえあれば」というような言い方はどうかと思います。トランスポンダ技術を使っているATS-Pは、連続パターン照査という点で安全性に優れていますが、変周型のATS-Sに比べると非常に高価な機械です。地方鉄道では財務状況などからPを導入するところが難しいところが数多く存在します。そういうところはやはり変周式ATSを改良して使っていく方がコストベネフィットの観点からはベターですし、そうしないとおそらく経営破たんしてしまうところもあるのではないかと思います。