経済的視点から見ると

大雑把に言って経済界や経済学におけるメジャーな考えというのは、「産業の発達は雇用を生み出し、人々を富ませ、消費を活性化させ、さらなる生産の拡大につながる」というものです。
医療産業が100兆円にもなってくれれば、多くの雇用が生み出され、地域経済も活性化する可能性があります。最近はバイオ系の修士・博士が過剰気味で企業も「専門バカは嫌だ」といって採用しないため、ポストがないという問題が顕在化していますが、医療関連の研究開発に多額の資金が投入されることによりこれらの不幸な問題が解消に向かう可能性もあります。決して悪いことではないですね。

上に記したような発展のサイクルに於いては、多くの人が利益を享受します。
外国に乗っ取られる危険性を侵してまでなぜBRICsVISTAといった発展途上国外資を受け入れるのか。それは、この発展サイクルを海外の豊富な資金という潤滑油によって動かし続け、国民、国家全体が豊かになろうとしているためです。国と民は豊かになり、そして潤滑油を提供した海外の投資家もそのおこぼれにあずかる。みんながいい気分。万々歳。
ちょっと楽観的過ぎる点は否めませんが、日本でも高度経済成長期がそのような時代であったように、投資ブームに沸く新興国というのはそのような状態にあります。私も少額ですが投資資金の半分近くを新興国にまわしています。もちろん、利回りがいいという点もありますが(同時にリスクも高いです)、もっぱら長期保有を目的としていることからも分かるように、その国の発展に寄与したい、ちょっとだけでも参加してその元気を分けてもらいたい、と思っているからその国に投資をしているわけです。(ちなみに私は株や投信、債券は好きですが、デイトレやFXは嫌いです。母親は「デイトレで儲けて」って言うんですが「デイトレは興味ない」と突っぱねてます)

日本においては医療というものは政府の社会主義的政策により抑圧されてきました(自身がもともと赤っぽかったので、これを親しみをこめて「赤の医療」と呼んでいます)。もちろん、その中で平等性や効率が磨かれてきたことは高く評価していますし、「赤の医療」には敬意を示します。ただ、少子高齢化や国家財政の危機的悪化により、もはや「赤の医療」ではシステムが立ち行かなくなってしまったという現実を鑑みれば、政府による規制の枠をセーフティネットが守られる範囲で取り外し、新興国のごとく医療産業も高度成長の時代を迎えるより他はありません。

日本は「外資=ハゲタカ」のイメージが強く、国としてかなり損をしているなぁと私は思うわけですが、ある分野が大きく成長するために外部の豊富な資金は欠かせないものです。実際、日本の高度経済成長を陰で支えたのは世界銀行によるインフラに対する巨額の融資でした。日本の場合、いわゆる「外資」と呼ばれるものが会計制度や税制度の整備の悪さなども相まって、バブル崩壊後の不況になってようやく入ってきたため、多くの人が「他人の足元を見る奴ら」と捉えています。もちろん、そういう「外資」の側面がないわけではありませんが、多くの「外資」は将来に魅力がありさえすれば基本的にはどこにでも投資をしようとする人々です。実際のところ、日本も外資によって救われた例が数多くあります。例えば大復活を遂げた日産なんかは典型ですし、外資とうまく提携して危機を脱した企業は数知れずです。最近は外資といえども、東大法学部などの日本のエリート層がたくさん就職していますから、一概に敵とみなすことは見当違いかと思われます。日本は外資アレルギーが強すぎです。最近、顕著になっている投資家の日本無視の大きな原因はこの外資アレルギーによるガチガチの規制のためと言っても過言ではありません。

混合診療の是非は国民の間でも分かれるところですが、何度も言っておりますが、適切なバランス機構、たとえば保険医療認可の過程で、医師と患者を過半数にした審議会制度を導入するなどして、セーフティネットとしての公的保険を守ることは十分に可能です。認可の期間を短縮してはという意見もあると思いますが、日本では絶対安全を求める世論が強く、薬害肝炎訴訟の件もあることから、たとえ大臣が認可を早くすると言っても、そこまでの効果は得られないものと考えられます。その間に、最後の希望を失って亡くなる患者がいるかと思えば、自由診療枠で治療をした方がよっぽど患者のためだと私は考えます。なお、個人的にはセーフティネット部分に関しては保険方式をやめて税負担方式とすることを望みます。