有機リン系といえば

中国製ギョーザから農薬検出、10人が中毒 兵庫・千葉
ギョーザが大変なことになっているようです。お弁当に大人気!シリーズは買った記憶はないのですが、いつもスーパーでみかける製品だけにビックリ仰天です。

さて、今回の事件ではメタミドホスmethamidophosという農薬がギョーザに入っていたようです。化学構造式は次のようになっています。

これはいわゆる、有機リン系農薬と呼ばれるもので、記事によると、パラチオンと同レベルの毒性を持つのだそうです。かつてパラチオンといえば農薬自殺の典型的な薬物だったみたいですが、日本では殺人や自殺が相次いだことから、はるか昔に農薬としての使用が禁止されています。

で、有機リン化合物といえばこういう農薬もあるのですが、実はソマンやサリンなど一部の神経ガス有機リン系の薬物だったりします。これらの薬物はコリンエステラーゼと呼ばれる酵素を阻害し、アセチルコリンを伝達物質とする受容体の働きを比較的長時間持続的に活性化し続けます。結果として、下痢や嘔吐といったムスカリニックな作用、脱分極性遮断による筋力低下や呼吸筋の麻痺といったニコチニックな作用、意識混濁などの中枢性の作用が現れます。
治療法としては一般的なものとしては(今回のものに適用できるかは分かりませんが)、PAM(pralidoxime)とatropineの投与がいいようです。PAMが効かない場合はatropineだけを投与します。これらはいずれもアセチルコリンの働きを弱める方向に作用します。確かオウムが94年ごろから危険なことをしているということを警察がつかんだのは、このPAMを解毒目的で大量に入手した形跡があったためという話があるようです。