20代〜40代までは後期高齢者医療制度に肯定的

アエラの記事を読んでいたのですが、ようやくバッシングブームから目が覚めたのか、後期高齢者医療制度に肯定的な意見が出てきました。
後期高齢者医療制度を廃止すると現役世代は損をする、という内容の記事で、アンケート調査の結果、20代〜40代では後期高齢者医療制度に対して肯定的な意見が多数を占めるということが書かれていました。もちろん、高齢期が近づいている50代以降では反対意見が多いのですが。ちなみに10代ではマスコミの意見を盲目的に受け入れているからか、なぜか否定的意見が多かった点も興味深い。

日本の敵は北朝鮮や中国ではなく、実はみのもんた古舘伊知郎なのではないかということを最近つくづく思っています。彼らが報道するのは表面的なことばかりで、問題の本質にタッチすることは殆んどありません。扇動をして国民を惑わすだけの存在です。後期高齢者の問題でも年金天引きや保険料の問題ばかりが取り上げられ、高齢社会や超高齢社会における負担割合の問題をちゃんと議論していません。本質から目を背けていると言っても過言ではないでしょう。(ちなみにみのもんたが体にいいと宣伝するものばかりを摂取して、余計に糖尿や高コレステロール血症が悪化する例も頻繁に起こっています)

私はこの本質的な問題を真剣に取り上げたい。あまり知られていない事実ですが、日本は他の国が経験したことがないようなスピードで高齢化が進展している国です。もちろん、高齢化率は世界1位。2004年の国連の予測では最低今後20年間は日本が1位をキープし続けるようです。2014年にはどの国も経験したことがない高齢化率25%という超高齢社会が訪れます。4人に1人がお年寄り。1世帯平均2人(2005年は2.31人)とすれば、2軒に1軒は高齢者がいる計算です。よく考えたら私の家の隣にも高齢者夫婦が住んでいますし、向かいももうすぐ高齢者になる夫婦が住んでいます。周りは高齢者だらけです。先日もお昼の電車で数えてみたのですが、やっぱり3、4人に一人がお年寄りですね。

病気を抱えておらず元気に過ごせるのであれば、問題はないかもしれませんが、人間である以上、年をとるにつれて色々な病気に悩まされることになります。毎年ちゃんと健康診断を受診して、適切に運動をしているお年寄りでも一定確率で病気になり、病院や診療所のお世話になることになります。この事実は変わることはありません。確率的な問題です。

では、その費用を誰が負担するのか。契約の原則から言えば、サービスを受ける高齢者が自分の分は払えばいいわけですが、年金生活をしている高齢者にとってはすべてを負担できません。そこで、払える人間が払えない人の分も払う、という社会保険の原則に従い、稼げる若者や中年から保険料をより多く徴収する必要があります。現在の後期高齢者医療制度では自己負担1割、残りの9割のうち、後期高齢者からの保険料は1割、税金からの投入が5割、現役世代からの仕送りが4割になっています。税金も現役世代が比較的多く払っていますから、後期高齢者の医療費の7割近くは現役世代が支えていることになります。前期高齢者はもう少し自己負担が多いのですが、全体的に考えても高齢者の医療費は半分近くが現役世代によって支えられていると言っても過言ではありません。さて負担割合や一人当たりの医療費が変化しないとして、これが1980年代後半のように高齢化率10%の時と昨今の高齢化率20%では若い世代が高齢者に支援する額は単純計算で2倍です。さらに勤労世代の割合はどんどん減っています。1980年代後半の勤労世代(15-65)は70%、現在は65%です。一人当たり2.15倍支出しなければなりません。これが今から15年後の高齢化率30%で勤労世代割合60%になると、総支援額は3倍、一人当たりの負担は3.5倍です。自らの保険料もあるし、企業側の負担もあるので、支払う保険料が3.5倍になるわけではありませんが、かなりの増額を強いられることは目に見えています。いわゆる今の団塊の世代や高齢者がかつて払ってきた支援額とは全く異なる次元になることは明らかです。当然払えない人もたくさん出てくるでしょう。それを努力不足にされちゃかないません。

日本は高齢化という観点では未曾有の領域に突入しています。大雑把に計算して現役の負担はx/(0.85-x)に比例して推移するのですから、高齢化率が少し増加するだけで現役世代の負担は大きく上昇します。持続可能な制度にするためにも高齢者と現役との負担割合を再検討していくことは当然のことです。

日本人を取り巻く状況は大きく変わりました。もはや昔の常識や感覚は通用しない。過去には学びつつもきっぱりと断ち切る覚悟が必要です。