SARSのアウトブレーク

図書館で新しく入った本をあさっていると、興味深い書籍を見つけたので紹介します。
SARS いかに世界的流行を止められたか」WHO西太平洋地域事務局(厚生労働省健康局結核感染症課推薦)
第14章に「メトロポール・ホテルの謎を解く」という項目があり、どのようにして最初の超蔓延が起こったかが記載されています。情報を整理すると以下のようになります。

  1. SARSに感染したZZF氏が異型肺炎様症状を呈し、中山医科大学第二病院(広東省)にウイルスを持ち込む
  2. 中山医科大学第二病院のLJL教授がマスクやゴーグルなど防護措置を取っていたにもかかわらず感染
  3. 気分がまだ良かったためSARSに罹患したとは信じず、香港近くの九龍地区にあるメトロポール・ホテル911号室に宿泊
  4. 空気の流れなどにより付近の902号室(入院場所:香港)、904号室(トロント)、906号室(香港)、907号室(広州)、908号室(香港)、909号室(バンクーバー)、910号室(ハノイ)、915号室(シンガポール)、917号室(米国)、925号室(フィリピン)、938号室(シンガポール)、9階だが不明(オーストラリア)に感染が広がる
  5. それぞれが旅行先あるいは帰国し、香港からバンクーバートロント、オーストラリア、シンガポール、フィリピン、ハノイにウイルスが広がる

ZZF氏が病院にウイルスを持ち込んだのが1月30日、メトロポールでの感染拡大が2月21日、感染を受けた人が病院に入院したのは3月上旬。1ヶ月足らずで中国広東省から世界中にウイルスが拡散したということです。

第27章のSARSから何を学んだかという項目では、

  • 感染してから症状が始まって数日が経過するまでウイルスを他人に感染させないというSARSの特質が感染拡大を防いだ(しかし、無症候性や症状が始まる前に感染拡大するウイルスであればもっと恐ろしいことが起こったに違いない)
  • 国家が感染に関する情報を隠さず透明性を確保するのが最善の政策
  • 人々が瞬時に移動するグローバル化した世界では、公衆衛生は重大な事業である

というようなことが書かれていました(そのほかにもlessonはある)。