国家価格委員会と診療報酬

私たちの年代というのは物心ついたときからソ連はすでに崩壊していたわけですが、最近ソ連の体制が少し気になっています。日本の医療システムはソ連と同じで中央計画経済の側面が大きいからです。

実際にソ連には賃金を決める国家労働委員会や原材料の配分を決める国家調達委員会などと並び、価格を決める「国家価格委員会」というものがあったそうです。国家価格委員会からは毎年何十万種類もの品目のプライスリストを作って全国に送りつけていたというのですから驚きですが、全部で3000〜4000種類近くあるという「診療報酬点数表」も国家価格委員会のプライスリストとよく似たようなシステムのように思えます。最近はDPCやDRGが推進されているとはいえ、これも中央によって価格が決められているわけですし、医師養成数も中央計画的に行われているわけで、医療計画なんてものが存在する時点で、日本の医療は一部を除いては基本的に社会主義共産主義システムで成り立っていることは明らかですよね。だから私は「赤の医療」と呼んでいるのですが。

そう考えると医療崩壊第二次世界大戦よりはソ連の崩壊に例えるほうが正確な気がしますね。

日本医師連盟日本医師会混合診療反対を謳っていますが、この視点で言えば
混合診療反対→中央計画経済維持希望→厚労省礼賛
ってことですよね。その割に「厚労省なんてなくなればいい」という意見が出てくるのが不思議で仕方がないのですが。
ちなみに当の厚労省は権益を守るために「計画経済」のシステムを維持したいとは思っているものの、人員不足や責任の重大さ、計画経済の「外の世界」のスピードの速さも重なって、プライスリスト以外はヒィヒィ言って地方に丸投げしているというのが実際の姿のように思えます。
(地域医療計画は地方任せだし、新薬の承認は「外の世界」の開発スピードについていけず遅れています)

中央計画経済を維持するためには、トップクラスの優秀な計量経済学者を集めて色々な分析をしてもらう必要があります。実際、ソ連の国家価格委員会には優秀な学者が多かったそうですが、そもそも「自由市場」というシグナルの存在しない中で、需要側の真のニーズやあるべき経済状態をどう見極めるかは至難の業ですし、うまく見極められたとしても、その分析結果が出た頃には実際の経済状態は遷移してしまっている、という点で結局はうまくいかなかったわけです。1960年代までの高度成長が続いている間は、そういう矛盾もマスクされていたのでしょうがね。

ソ連のシステムについてはもう少し調べてみたいなぁと思う次第です。
少なくとも現時点では、計画経済ですべてを制御するシステムは現状を鑑みるとやっぱり無理だろうということだけは言えると思います。