摩擦係数の上昇か?

阪急電車が脱線 甲陽園駅 バスで代行輸送
甲陽園駅で阪急電車が17km/hで分岐部を渡っている最中に最後尾車両前部の台車が脱線したようですが、この事故はなんとなく神鉄有馬口の事故と状況が非常に似ているように思うんですね。

神鉄有馬口事故といっても多くの方はピンと来ないと思うので少し説明しますが、2006年1月から2月にかけて神戸電鉄有馬口駅手前で2度、電車がポイントを低速走行中に脱線するという事故が起きました。航空鉄道事故調査委員会の報告などによれば、その原因は

  • 左右のレールがポイントの構造上の問題で、7mm高さがずれており、それにより車輪にかかる力にアンバランスが発生した
  • 事故車両が「転削」と呼ばれる車輪を削って再度きれいな円形に直す作業から時間が経っておらず、車輪の摩擦係数が上昇していたこと
  • ポイントが旧型の軽量タイプで、さらにレールの磨耗が8.5mmと社内基準値(8mm)を最大0.5mm上回る程度に進行し、頭部の形状が変形していた(ただし、これは「関与した可能性がある」との表現にとどまる)

によって、低速走行時に分岐部で乗り上がり脱線が起こったためとされています。

今回の阪急電鉄の事故も、新聞記事を読む限り非常に近い状況で起こっていると考えられます。

  • 甲陽園駅手前の比較的急な分岐を低速で走行中、後部車両が脱線した
  • 当該車両は17日まで点検状態にあり、その際に転削作業を行ったことが想定される
  • 甲陽線は短距離の枝線であり点検後の総走行距離はかなり短く、点検時に転削をしたのであれば、転削直後と同じような車輪状態であったことが想定される

ただ、反対側の分岐レールの一部がめくれ上がっているなど、神鉄の事故とは若干異なる部分もあり、真相は現時点ではなんとも言えません。ただ、状況は非常に神鉄の時の事故と似ているなという印象を持っています。

ちなみに、分岐部の乗り上がり脱線というのは、mm単位のズレが原因で発生していることからも分かるように、相当微妙な側面があり、速度超過などに比べればかなり対策が難しいのも事実でしょう。