大麻事件の本質

私は当たり前ですけど違法薬物をやったことがないので、どういう感覚になるか分からないのですが、よっぽど気持ちがいいんでしょうね。最近、大学生、特に比較的ランクが高い大学生の大麻による逮捕事件が相次いでいます。しかも罪の意識が低いと。
当該大学生を批判するのは簡単かもしれませんが、これだけ社会問題になっているのですから個人の問題で終わる話ではありません。
突拍子かもしれませんが、私が最近常々思っていることは、この事件の根底には日本のアルコールやタバコに対する甘さがあるのだということです。大麻事件でなんでアルコールやタバコなのかと思われるかもしれませんが、偏差値の比較的学生の頭の中を想像してみれば、当たらずも遠からずだと思います。
まず、大麻を始める人の多くはインターネットである程度大麻のことを調べてから吸っているといいます。では実際に「大麻」と入れてgoogle検索をかけてみると何が出てくるか。上から4番目に出てきたサイトがこれでした。
大麻取締法変革センター
サイトを覗いてみると、「大麻はアルコールやタバコより安全です」とあります。「ウソばっかし!ありえない!」と思った人は、アルコールやタバコに対する認識が甘いです。依存性という観点からは教科書的にもアルコールの方が格段に危険です。実際、アル中の方々は世の中そこら中にいっぱいいますよね。一升瓶を抱えて下町をステテコ姿で歩いているおっちゃん、なんてのは典型的なアル中ですし、駅や電車の中で酒を飲んでいる人もほとんどが中毒に近い状態だといいます。医学生でもアル中状態になった人は結構いますし、そこから抜け出すのにだいぶ苦労したという話も聞きます。私の周囲では、感覚的には100人に5、6人ぐらいがアルコール依存状態に陥る感じですかね。かなりの数です。
大麻も確かに危険な薬物ではありますが、アルコールはもっと危険な薬物です。ほろ酔いの状態でも脳幹(の網様体賦活系)に薬物が作用しているわけですし、「酔ってフラフラする」状態では小脳が麻痺している証拠であり、一時的な現象だとはいえ、あとで冷静になって考えてみるとゾッとします。中毒がひどくなると小脳が萎縮する場合もあります。

一方、タバコは病気への影響という観点からは相当危険です。いまの日本人は3人に1人ががんで死ぬといわれていますが、タバコは喉頭がん、食道がん、肺がん、膀胱がんなどのリスクを大きく高めます。また、同じく日本人の4人に1人ぐらいが脳梗塞心筋梗塞など循環系の虚血疾患で死にますが、これの大きなリスクファクターとなっているのがタバコです。

大麻についはいろいろ研究や議論はありますが、少なくとも依存性や病気との関連という視点で見れば、アルコールやタバコと同等もしくはそれ以下の危険性しかない、と考えるのが自然です。にもかかわらず大麻は厳しく取り締まられ、アルコールやタバコは年中入手可能な野放し状態であることを考えれば、頭がある程度いい大学生なら大きな矛盾を感じたっておかしくはありません。それなりの知識があるからこそ、彼らには罪の意識がないのであり、むしろ「罪の意識を持て」と盲目的に言う人ほど何の知識も持っていないのが現状です。

大麻も注意力を落としたり、妄想を引き起こすこともある危険な薬物ですし、大麻からはじめて麻薬や覚醒剤に手を出す人も少なからずいるので、私は大麻を解禁せよとはいいません。が、少なくともこの状態を解決するには、野放しになっているタバコとアルコールに対する規制をさらに強化することが必要と考えます。大麻事件は大麻や大学生が問題なのではなくて、タバコとアルコールに甘い日本の社会自体に根本的な問題があるのです。タバコは受動喫煙の問題から最近だいぶん厳しくなってきた感があります。アルコールも飲酒運転に関しては少し厳しくなってきました。しかし、アルコールそのものに対しては世界的に見てもまだまだ甘いのが現状です。酔って暴行したり器物を損壊した場合には、当然、通常の刑罰よりもかなり重い刑罰を課すよう刑法を改正すべきではないか、と思います。あるいは大麻や麻薬などと同様、アルコール取締法をつくって月間の消費分量を制限したり、適切な売り方をしなければ罰するという手もあるかもしれません。

アルコール好きな人の中には、「飲んで判断能力が失われていれば責任能力はない。厳罰反対」と言う人もいるでしょうが、精神疾患の場合はもとからなので刑罰が減免されるのはやむを得ないですが、アルコールは最初から飲まなければいいだけの話なのですから、その論理は通用しません。

日本では「飲み会」や「晩酌」とか言って当たり前のようにアルコールという薬物を大量摂取する人も多い。しかし、実は結構な人がアルコールの依存性や中毒性に侵されているのです。そして賭け事にどんどんお金をつぎ込むの同様、どんどんアルコールを消費していく。しかも、自分が依存状態になっていることのに気付かないし、「酒豪」とかそういう言葉で依存を美化してしまう。そういう文化なんですね。タバコを推奨するJT同様、アルコール取締りに反対する酒造会社も罪なものです。

一度、(日本だけの)常識から離れてアルコールの実態を見直してみることをお勧めします。