環境を管理するという発想

何か思いどおりに人が動かなかったとき、それに対処するには2つの方法があります。
一つは規則、すなわちルールをつくってそれに従わせる方法です。たとえば、授業中に携帯電話でメールするやつがいれば、「携帯電話を学校に持ってくるな」というルールをつくり、それにすべての生徒を従わせるというものです。このような規律訓練型制御法のメリットとしては、自らの方針を明確に出来ることや、ルールに従わないものをルールを盾に糾弾できるということが挙げられますが、一方で上から押さえつけるような形となるがために大きな反発が生じ、それを押さえつけるのに相当の労力が必要になるほか(「法律」を守らせるためにどれだけ警察官に税金が投入されているかを考えれば一目瞭然)、一度決めたルールを撤回するのが難しく、規則が硬直化しやすい、また、特に教育にそういうものを導入すると画一的な人間ばかりが育ち、柔軟な発想力が生まれてこなかったり、多様性を許容できなかったりするというデメリットがあります。
もう一つのやり方としては、環境を変えることで人間の行動を自然に変えさせるというものがあります。たとえば、先ほどの携帯電話の例では、校舎に妨害電波を張り巡らせておき、授業中はそもそもメールを送受信できないようにしておくというやり方です。このような環境管理型制御法のメリットとしては、相手に統制されているという意識を与えない、必要以上に武力や権力で以って違反者と向き合う必要がないというものが挙げられる一方、存在が見えにくい管理技術を開発する必要があるほか、管理者が自らの方針や統制基準を明らかにしないために、場合によっては人々が思わぬ方向へ制御されてしまうことがあるというデメリットがあります。

集団行動的で画一的な人間を好む日本人(特に公立学校出身者)の場合、なにかと思いどおりにいかないことがあると、規律訓練型の制御法が先に思い浮かばれるわけですが、実際には環境管理型と規律訓練型の両者を組み合わせながら、制御していくのが不必要ないがみ合いを避けつつ、すばやく目的を達成する近道となります。

今日はクラブ(女子が多い)の忘年会があり、隣接する運動部の男連中が勝手に部室のソファで汚れたまま寝て、物を散らかし、ゴミを大量に捨てていくのにどうやって対処するか、ということが議論になったのですが、学務課に相談するとか、申し入れをするとかそういう話ばかり出てきたので、環境管理型制御という視点から「いっそ、部室のあちこちにお花でも飾ったら?ソファにはピンクの花柄のシーツでも敷いておくとか」という男らしからぬ提案をしてみました。参加者が女の子ばっかりだったというのもありますが、「これはいい!」という話になって、来年から実行してみることになりました。

落書きの多い壁にきれいな絵を書いてみた、というのと似た発想ですが、うまくいくか少し楽しみにしています。