夜まで働くな

このところ色々事情があって(BPII傾向といえば分かる人もいるかもしれません)、あまり更新できていていないのですが、私の新たな提言は
「夜まで働くな」
です。
不況になると派遣労働者などから仕事が奪われて失業率が上昇する一方、一部の正社員にはその分の仕事が上乗せされる傾向にあり、残業だらけで疲れ果てて自殺しまうということがよくあります。ちゃんと分担してやれば、双方ともにある程度の我慢で済むはずだったのに、負荷の分担がうまくいかなかったためにどちらもが不幸になってしまったという最悪の結末です。

最近では、そういう不幸を減らそうと、一人頭の仕事を減らしつつ雇用を確保するという、ワークシェアリングの考え方が出てはいるのですが、なかなか実際に導入されるには至っていません。正社員の側に給料を減らされることへの不安があって、労組が過剰な抵抗をしていることや、雇用人員を増やすと相対的に福利厚生や教育研修費が増加するので、企業側が効率という観点からそれを嫌がっていることも原因でしょう。

それはさておき、夜まで残業する人が増えると医療政策上問題になるのが、診察時間までに仕事を終わらすことが出来ず、夜間に病院を利用する人が増えるという問題です。特に関西では開業医が4-7時の午後診という形で仕事帰りのサラリーマンの受診を受け入れている傾向があり、残業の増加でその分が夜間にまわることは確実と思われます。昨今、日本各地で時間外診療を行っている病院がパンクしたり、そこのドクターが疲れ果てて辞めてしまうという問題が起きていますが、さらにその現象が加速されるかもしれません。

でも、私は「コンビニ受診だ!」とかいってそういう人を責める気にはなれません。近頃はリストラの恐怖で、本当になかなか会社を休めないからです。私のいきつけの散髪屋さんがよく話してくれることなのですが、かつては少し大きい会社ならビルの地下とかに必ず理髪店があったそうです。「身だしなみを整えることは会社にとっても利益」という考えから、勤務時間中であっても散髪することに抵抗はありませんでしたし、むしろ「これから商談するんだから、下行って散髪してこい!」の世界だったそうです。しかし、最近ではそんな話は聞きませんし、おそらくやったら職務怠慢で懲戒になる恐れもあります(実際、青森で問題になった事例がありました)。いつからこういう風潮になったのか、人生経験の短い私には分かりませんが、少なくともそういう考えが、「コンビニ受診」を増加させている原因であることは明らかです。ネットカフェはアウトにしても、理髪店と診療所は、遊びに行っているわけではないのだから勤務時間中に行くことを認めるべきだと私は思うんですけどね。労働者の健康や身だしなみを整えることは社会にとっても、会社にとっても利益ですし、当然の義務であるはずです。

さらに言えば、そういう誤った循環に突入して行った社会自体がおかしいんですよね。些細な規律にこだわり、自分達で自分達の首を絞めて、医療崩壊したり、うつ休職が増えたりして損しているという、傍から見ているとなんともバカバカしい話です。しかも誰もこのアホさ加減に気づかないというところに日本社会の病理像みたいなものを感じます。

ちなみに昔はスーパーといえば午後8時ぐらいが閉まるところが多かったわけですが、最近はコンビニを意識してか夜遅くに帰って来る人のために夜11時ぐらいまで営業しているところが増えました。こういう深夜営業が増えると、本来なら家に帰ってさっさと寝ていた人まで、便利で楽しいからと夜型の生活行動を取るようになります。「夜に活動するのが当たり前」となると、当然「病院も夜に行くべきだ」とか「残業したって生活に支障が出ない」と考える人も増えるでしょうし、睡眠時間が慢性的に少なくなって心身の健康を害する人が増加します。完全に悪循環ですね。どこでこの悪循環を断ち切るかは、社会の意識改革にかかっています。今当たり前のように行っている生活行動を、別の視点から捉えなおして「異常」だと感じるかにかかっているのです。

最近、それを痛感しました。人間皮肉なことに痛い目にあって初めて、そういう「異常さ」に気付くものなんですよね。

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