最も安全な鉄道で起きた事故

大阪の地下鉄鶴見緑地線の事故は今まで触れませんでしたが、私の中ではかなり気にかかる事故でした。なぜなら、この路線は日本の在来鉄道路線の中でも最も安全な部類に入る鉄道だからです。福知山線は当時点照査しかできないATS-Swしか装備されておらず、どちらかというとやや危険に入る部類の路線でした。しかし、鶴見緑地線はATOといって、地下鉄や首都圏JR等に導入されている連続照査可能なATCシステムに自動運転機能が加わったシステムを導入しており、運転士は出発時にボタンを押すだけであとは勝手に列車が運行される仕組みです。カーブの手前でも勝手に減速するので機械が故障しない限りは福知山線のような事故は起こりえません。ATOを最初に導入したのは神戸市営地下鉄西神山手線ですが、首都圏の地下鉄では2000年前後からATOの導入が進み、大江戸線三田線などで導入されています。つくばエクスプレスもそうでしたね。大阪近辺では鶴見緑地線神戸市営地下鉄の海岸線などでの導入例があります。

というわけで、本来なら最も安全な部類にはいる鉄道がなぜ・・・と思うわけです。
ダイヤ優先、規定違反6件…大阪の地下鉄事故
鶴見緑地線の安全を担保しているATO/ATCシステムそのものが機能していなかったということですね。訓練で時々マスコンを握っているとはいえ、普段滅多にお目にかかれない状況で慣れない手動運転をしたがゆえに起きた事故ともいえます。柳田氏がかつて指摘していましたが、人間は機械に頼り過ぎると安全を阻害することがある、というのをまさに具現化したような事故です。

しかし、記事では規則違反という側面でこの事故を分析していますが、規則も何も車内信号も故障しているのに(地上信号機はないので完全にブラインド)ポイントの手前で止まるという発想が出てこなかったのが不思議に思います。機械に頼り過ぎるとその辺の危険察知能力も低下するのでしょうか。