エヴァ

残酷な天使のテーゼ」とかは、替え歌の影響もあり、我々の世代では有名な歌ですが、意外と実際にエヴァを全部見たという人はそんなに多くないはずです。今日、はじめてTV版をすべて見ましたが、非常に興味深いですね。ガンダムみたいなただのロボット物かと思っていたら、全く違う。確かにロボットはロボットですが、最終話に近づけば近づくほど「こころ」を描いている様子が分かります。

実際のところ、フロイトの思想や精神医学的な背景知識があると、「あ〜、これはあれのメタファーだな」ということはすぐ分かりました。たとえば、oral stageという副題がついたエピソードが有りましたが、まさにこれは口唇期なわけです。ただ、一方でこれは14歳に見せるのは正直よくないなと思います。まだ不安定すぎる時期に、特に最終章あたりは限界でしょう。私ですら、最近ようやく分かってきたこと・・・そういうものをテーマにしていますからね。単なるロボット萌え〜、とか綾波レイ萌え〜、という捉え方ならいいのですが、本当に深く考える力のある人間が見ると病的に成りかねません(多くの人は考える以前に、そういうテーマを受け付けないだろう)。まぁ、青春時代をそういうことに捧げる覚悟があるのならいいのですが。

私自身から見たこの作品全体の感想としては、「素晴らしい、でも分かりにくい」に尽きます。逆にその分かりにくさがこの作品の良さなのかもしれません。一方で、こういう映画が人気になるというのはそれだけ「こころ」に喪失感を感じている人が多いのかなと思います。

最近、私自身はようやく感情モニタリングという手法を編み出して、(前意識のレベルまで)「自分の感情を知る」ことができるようになりましたが、周囲の人にそのことを話しても、あまりピンと来てくれる人はいません。多くの優秀な人は「脳はあるけど心なんてないさ」と言います。情動は確実にあって我々の体と行動に多大な影響を及ぼしているはずなのに、「心」そのものを感じれない。情動を感情として感じる回路が未発達または機能していない状態。都市化とコンピュータが普及した世界では人はどうしてもそうなってしまうのかもしれない。そういうことを最近考えている私には、この映画の言いたいことはなんとなくわかる気がします。