事業仕分けは自称仕分けで自傷仕分け

私は政治と金の問題や普天間問題よりも「事業仕分け」を民主党の最大のマイナス点と捕らえています。こういう事業仕分けをしている限り、民主党は支持しませんし、悪口はいくらでも言ってやろうと思っています。

テレビだけ見ているアホ国民にはわからないと思いますが、事業仕分けに関係する分野の専門家に聞けば、各々の分野においてどれだけ仕分け人が事業そのものに対して(つまり無駄かどうかを考える以前に事業の捉え方として)幼稚園児並みの稚拙な議論をしている実態が見えてきます。

最もいい例がiPS細胞が開発されたからES細胞の研究はする必要がないという発言でしょう。再生医学に少しでも興味があって勉強したことがある人間からすると、これだけ乱暴な発言はもはやバカ判定されても文句の言えないレベルです。政治でたとえれば、「日本は大統領制だ」と言っているのと同レベルです。新聞の記事程度しか知識を集めず、予算の数字だけ眺めて机上の空論をこねくり回している民主党議員の姿が目に浮かびます。官僚でも新部署に異動すれば新しい分野のキャッチアップに必死になるというのに。

すでにわかりきっていることですが、戦後65年の歴史の中でこれだけ多岐で複雑になった国家事業を、たかが半年程度で仕分けられるはずもないのです。本来、こういうことは4年間かけてじっくりやるべきものでしょう。

とりあえず予算の無駄を省きたいならば、各事業に一律に減額をして、どうしても満額必要だというものに対して仕分け人を交えて復活折衝をさせればいい話です。かつてのシーリングに近いやり方ですが、そのほうが各省もやりたい事業を絞ってくるでしょうし、自主的に無駄を省く圧力にもなるでしょう。どんな小さなかつ有益な事業にも探せば必ず一定割合の無駄はあるのですから。

いい成功事例が国立大の運営交付金の段階的な削減です。これには地方国立大と都会の国立大の格差が広がったという批判もありますが、中にいる人間としては無駄な事務が削減されたという印象があります。無駄が削減された後は必要まで削減されてしまうので、研究教育の保護や格差の観点からいつまでも減額を続けるべきとは思いませんが、3〜4年ぐらいの期間限定なら十分にやってよかった施策ではないかと思います。(もっとも病院運営交付金の減額は診療報酬の低迷と相まって悪影響のほうが大きかったのですが。あと、一律削減はいいとしても、基準のよくわからない順位付けで削減額を変えるのはよくありませんね)

また、天下りの問題と事業仕分けの問題は本来切り離して考えるべきものです。天下りが関与していてもやはり必要あるいは有益な事業はあります。天下りが問題だからといって、国家にしかできない事業そのものを廃止してしまえば、しわ寄せを受けるのは国民自身です。今はあまり痛みを感じていませんが、来年以降じわじわとこの自傷行為に対する痛みを感じる人が増えるでしょう。事業仕分けに無条件に肯定的な人々はそんなことまでは考えられていないのが現状です。天下りがやられてわーいわーい、という程度にしか思っていない。自分もやられるんだということに気づいていない。そして後になって痛みに気づき、ごちゃごちゃと蒸し返す。小泉時代から国民は全く成長していないのです。