今週のThank you Hankyu cafe7/19日号

Thank you Hankyu cafeというのは阪急創立100周年を記念したメールマガジンなのですが(詳しくはこちら)、今回のテーマはVVVFインバータということで、VVVFをHNにもしている私にとってはちょっと面白かったですね。

せっかくですので、VVVFについて少しだけ語りましょう。最近の電車はよく、発車時や減速時に「ぷい〜ん、ぷい〜ん」という電子的で、自動車のギアをチェンジしたような音が鳴ります。昔は「う〜〜〜〜ん」といかにも回転数に比例してモータ音が鳴ってるだけだなという音だったのですが、最近の電車は音が電子的です。

この音を鳴らしているのが、VVVFインバータ制御装置(Variable Voltage Variable Frequency inverter)というものです。もっとも、これは音を鳴らすための装置ではなく、電車に取り付けられている三相かご型誘導電動機という交流電動機に加える電気を制御する装置です。副作用としてちょっと耳障りな「磁歪音」がモータや制御装置から発せられます。これが「ぷぃ〜ん」の正体です。

では、なんでこんな音が出るのか・・・。それは最近の電車のモータが交流モータを使用していることにあります。VVVFインバータ車が出る前は、基本的に電車には直流モータが使われていました。直流モータは大都市鉄道の架線に流れている直流1500Vを抵抗器を通して加えてやれば、そのまま動いたので制御は簡単でした。しかし、直流モータにはブラシや整流子といった摺動部があり、定期的なメンテナンスが必要です。これには多くの人件費と技術教育が必要です。そこで、これをなんとかなくそうとして導入したのが、三相かご型誘導電動機というモータでした。このモータはアラゴの円盤という原理を使って動いており、固定子(ステータ)から発せられる磁場の変化によって、回転子(ロータ)が非接触的に回転させられます。非接触的なので、摺動部がなく、基本的にメンテナンスフリーです。ただし、このモータは交流モータなので、今までのように直流を印加しても動きません。そこで、直流を交流に変換する装置(インバータ)が必要だったのです。

インバータといえば、多くの人はインバータ蛍光灯や、車載のAC100V供給用インバータを思い出しますが、あれらのインバータは基本的に一定周波数、一定電圧の交流を発生させます。特に電圧や周波数を動かす必要もないし、動かしたら誤動作する機器があるからです。ところが、速度を調節しなければならない電車ではそうはいきません。実は、誘導電動機の回転数は若干のすべりはありますが、基本的に交流の周波数に比例するからです。また、回転数が上昇すると同時により大きな電圧をかけてやらなければ一定のパワーを出すことが出来ません。したがって、電車用のインバータは可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frquency:VVVF)でなければならないのです。だからVVVFインバータと呼ぶのです。

ちなみに、直流を交流を作るというのはどのようにするかというと、小さい電子機器などではOPアンプなどを使って積分回路などを用いて交流を作るのですが、電車のモータレベルの大容量機器ではそういうことが不可能なため、スイッチングという電気を細かくON/OFFさせることによって擬似的な交流を作ります。たとえば、10Vの電気を、ONの時間:OFFの時間=3:7でスイッチングしてやると、実質的に3Vの電気を供給することになります。この原理を用いて、ON/OFFのタイミングを調節してやることにより、波の形をした交流波形を生成するのです。ただし、電気を切り刻んでいるため、きれいな交流にはなりません。様々なノイズや高調波を含みます。これらが、モータやインバータのリアクトル成分(コイル)などに働き、共鳴して耳障りな音が発生するのです。

ちなみに、vvvfigbtのigbtとはInsulated Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート形バイポーラトランジスタ)というスイッチングに使われる半導体の名前です。この素子はPTR(Power Transistor)、GTO(Gate Turn Off Thyristor)に続く、第三世代の素子で、例の磁歪音の周波数が1、2kHzと若干高めになっているため、音が静かなのが特徴です。

久しぶりに鉄道の解説をしたような・・・・。