JRの調査と事故調の調査

「まるで他人事」極まる不信
ATS設置遅れを謝罪 JR西社長 尼崎事故
検証なし「なぜだ」遺族ら不満噴出
社長謝罪も紛糾6時間 尼崎脱線事故JR西説明会
調査、事故調任せ
JR西日本社長が会見 遺族・負傷者説明会は終了
遺族「自ら調べて反省を」 JR脱線事故の説明会
JR西の脱線事故説明会20時間、「内容不十分」と被害者

医療の分野でも「診療行為に関連した死亡に係る死因究明のための第三者機関」いわゆる医療事故調の設立が検討されているわけですが、この制度を考える上でJR西日本福知山線脱線事故遺族とのやりとりは非常に重要な示唆を与えてくれるものと私個人は考えています。

で、今回JR西日本は航空鉄道事故調査委員会の最終報告を受けて、独自の調査結果と称するものを遺族に説明したわけですが、その内容は報道によれば基本的に事故調の報告に沿った内容と謝罪が中心であり、あまり会社独自に突っ込んで原因や遠因を分析したものはなかったということが明らかになっています。これについてJR西日本山崎正夫社長は「(私たちが調べると)ダブルスタンダードになる。国の機関の調査結果を重視したい」と述べています。このことは事故の当事者が行った自発的な調査結果が公的な第三者機関が行った調査結果と異なった場合に「企業防衛のために別の事故原因をでっちあげている」と各所から批判を受けかねないという懸念をJRが強く持っていたということを示唆しています。しかし、かといって事故調の報告をなぞった調査を行えば、今回のように「独自で調査をする気がない」という批判を受けてしまいます。おそらく、遺族としては事故調の調査をベースにしたうえで、さらに事故調が指摘できなかったJRの悪いところを指摘して欲しいという意図だったのだと思いますが、当然JRにはJRの考えがあるわけで、正確性が求められる事故調査までをも安易に遺族の主張に迎合させることが果たして鉄道業界全体として適切なのかという問題がでてきます。下手な迎合をすると。それにつけこんで遺族以外の人間が出てきて安全を損ねるような余計なことをしかねないという懸念もあるでしょう。結局、何をやっても批判を受けるリスクがあるというのがこの手の事故における独自の事故調査なのです。私はJRを擁護するつもりはありませんが、ダブルスタンダードを危惧する山崎社長の発言に理解はできます。医療事故調でも院内事故調査委員会との間で同様の問題が出る可能性はあります。特に診療所や小さな病院レベルでは。