行政処分の多様化

医道審議会医道分科会で医師の処分が決定されました。
医道審:医師・歯科医師6人免許取り消し、61人停止処分
官僚組織でも比較的重要かつ継続的な案件については、省令などに基づいて特別チームをつくることがあるのですが、医事課には「医師資質向上対策室」という特別チームが設けられています。ここでは主にリピーター医師や刑事事件で有罪が確定した医師など(異論はあるとは思いますが)「問題があるとされる医師の処遇」について扱っています。このようなチームが立ち上げられた背景としては、今まで医師の行政処分というものが完全に刑事裁判の判決の後追いになっており、裁判では無罪になったが本当は問題のある医師の処分が甘いであるとか、処分するだけで再教育をしていないという問題、逆に刑事で有罪となると医師免許取消しといった厳しい行政処分が二重に課されてしまい、復帰が二度と不可能になってしまうという問題があります。

今後の基本方針としては、医師免許停止や取消し程度しかなかった行政処分を多様化し、再教育とセットにして問題のある医師のレベルアップを図っていくという方向のようです。ここで注意すべきは「医師資質向上」とは、あくまで「問題のある医師」の底上げであって、医師全体のレベルアップではないということです。行政処分という強制力を持った公的処分はこちらである程度行うが、医師のレベルアップ自体は医療界ですべきというのが厚労省の基本スタンスです。

実は医事課の医師資質向上対策室は各種の情報収集や判決内容の分析など専門知識が必要なことも多く、実は10名以上という大きな組織だったりします。ただし、注意しないといけないのは資質向上対策室のメンバーは室長を含めてほぼ全員が普段は総務課や医事課、試験免許室で別の仕事をしており、兼任だということです。一応、医師資質向上対策室は患者からの苦情や医道審議会への申し立ても受ける仕組みであることを考えると、霞ヶ関の人手不足は相当なものであるということがこのことからもわかります。

(逆に言えば地方公務員とか地方局がいかに暇で非効率かということなんですけどね。先日、島根県かどこかで医師確保対策室を設置して4名で専任で仕事をしているとありましたが、霞ヶ関でもいろいろなものと兼任していることを考えると、実際に医師不足対策に関わる人はその程度なのではないかと思ったりするわけですが・・・。ちなみに医師不足対策で最近、世間からよく聞かれるようになった論調は、医師はすべて公務員として採用し、強制的に各地に派遣するべきだというものです。もし、今後そういう民意が強まれば、厚労省も動かざるを得なくなるでしょうね。医師法を改正すればそういうことも可能になります。医業は公務員である医師でなければ行ってはならないと。その場合、憲法には違反しないと思いますが、実際に施行されるとなると・・・)

本来、情報収集や分析は忙しい本省で行わなくてもいいのではないかという気もするのですが、航空鉄道事故調も国交省からなかなか独立しないことからもわかるように、行政処分という強制権限と直結しかねないものは濫用や不正を防ぐために、基本的に省内に置かざるをえないという問題もあるようです。