道州制

国の出先2770機関の統廃合、知事会が要求へ
この問題は道州制の件とも絡んでくるでしょうね。
いま、国の制度とか通知がどのようにして自治体に伝わって執行されていくかと言うと、代表的な例では
霞ヶ関の本省→国の出先機関(地方局)→都道府県→市町村等
という流れになっています。数字で表すと単純には1→8→47→1822となり、本省から出先機関が8倍、出先機関から都道府県が6倍、都道府県から市町村へが38倍となっています。もちろん、霞ヶ関都道府県へ直送することも多いようです。逆に疑義照会などでは出先機関は基本的にすっ飛ばされます。というか回答できないのだと思います。市町村→都道府県→霞ヶ関という経路で疑義照会が来て、本省の担当者が回答することが多いようです。

で、出先機関というのがイマイチ何をやっているかよく分からない。中央が政策立案であるのに対し、出先が執行機関であることは確かなのですが、実際には都道府県や市町村もそれをやっているわけで、独自の管轄権を持たない出先機関がわざわざやる必要もない。その辺が極めてムダじゃないかという指摘は前々からあります。地方公務員からすると、「人数は百人規模で抱えているのに大したこともしない」ということで、評判は悪いようです。ただ、都道府県を越えて広域で考えるべき問題はやっぱり地方ブロック単位で組織された出先機関の業務というのはそれなりに意味を持つはずで、今回の知事会の要求も出先機関をもっと活用したいという意志の表れなのかもしれません。

人口が減少していく中で、地方の実状を考えて見ていつも思うのは、都道府県という行政単位がそもそも間違っているということです。たとえば、関西では神戸−大阪−京都という大きな中枢軸があって、その周辺にベッドタウンや工場が広がっているという構図を考えることが出来ます。したがって、これらの地域の産業振興や人口問題、地域の役割分担を考えるときには、兵庫県大阪府京都府というような都道府県単位の問題ではなく、関西地方全体を基準として考えていく必要があります。たとえば、大阪の中心部は主に企業や商業を中心とした役割を担う一方、阪神間や京阪間は住宅地としての役割、滋賀や和歌山は農林の役割というようにです。そうすれば、各都道府県が県庁所在地を商業中心として無理に発展させる必要はなくなりますし、農林中心の場所に無理に立派な道路を作って工場を誘致する必要はなくなります。地理的実態に合わない都道府県単位で行政を区切るから、財政に大きな格差が出たり、無駄な道路が作られたり、あまりに多極化して全体としてのバランスが保てなくなっていると私は考えます。従って、私は道州制に賛成です。少なくとも都道府県を廃止してもっと大きなブロック単位の行政区分をすることを望みます。

話は全くそれますが、僕は大回り旅行というのよくします。これはJRの大都市近郊区間特例を利用したもので、定められた範囲内であれば、同一駅・同一経路を通らない限り、最短距離の運賃で計算されるというものです。従って、これを使えば大阪−福島の初乗りキップで奈良や琵琶湖をぐるっと回って電車に乗ることが出来ます。もちろん、途中下車は出来ません。で、この大回りをやっていつも感じるのは、車窓を見ればだいたいどの地域がどの役割を担うべきなのかということは推測がつくということ、そして都道府県という行政単位は無意味だということです。たとえば、典型が大阪と兵庫。阪神間を知る人ならば誰もが納得するでしょうが、まったく分ける意味が分かりません。車窓を見る限り、どこから大阪でどこから兵庫か分からない。同じような住宅街が続くばかりです。伊丹空港こと大阪空港だって実は兵庫県ですしね。京都と大阪の関係もそこまでではありませんが、やはりあまり分ける意味を感じません。さらに、中核都市からの距離であるとか、周辺の地形などによってある地域がどういうものを中心に発展しているのかということが一目で分かります。同じ滋賀県でも、名神高速や一号線の通る地域というのは大規模な工場が多いですし、反対に湖西や北部地域は雪が積もる地帯であることもあり、農林が中心です。兵庫でも阪神から明石ぐらいまでは住宅地が多いですが、それより西や中北部では山地も多く農林が中心です。特に加古川線沿線は田畑の多さが目立ちます。逆に言えばそういう産業はその地域の地理的環境に適しているからこそ、よく発展しているのであって、たとえば山地が多く農林が適している地域にわざわざポツンと大規模住宅街を作るのは馬鹿げていますし、大きな幹線道路も通っていない地域に工場を誘致するというのも馬鹿げています。ところが、都道府県というものはそういう地域全体で考えるという発想が乏しいのか、税収を上げるためなのか、自分の県を発展させるために工場とか住宅を呼び込もうとするので、道路が欲しい欲しいと言う訳です。適材適所だとか選択と集中という考えがあまりないわけです。

やはり、こういう現状を打破するにはたとえば関西地方というような単位で予算や産業振興、制度を考える視点が必要です。場合によっては特区のようなことをやる必要があるかもしれません。それを考えると道州制というのはやっぱりやるべきではないか、と私は思います。それも中途半端な道州制ではなくて、法律や制度が多少違っても構わないというような、完全な道州制にすべきです。そうしなければ、地域や人口数にあった適切な制度というのは作れない。大都会や新幹線を持つ関西と、そういうものを持たない四国が同じ制度の下で動くのが適切でしょうか?決してそうではないのは明らかです。資格や犯罪に関する規定などは国内で統一する必要がありますが、医療福祉制度や産業振興制度は道州が地域のニーズに合わせて独自に決めればいいと思います。

時間はかかると思いますが、30年後ぐらいに日本がそうなっていることを強く望みます。