多極集中のために

「カップヌードル」の日清食品 大阪から東京に本社移転 
大阪人からすれば「またか」という感じですね。武田に日清・・・次はドコだ?

近畿経済産業局が出したレポートにこのようなものがありました。
近畿の本社機能の流出について

グラフを見ると大阪の本社機能が流出していることが分かります。このレポートにはありませんが、特に大企業については大阪から東京へ流出する傾向があるようです。この一つの理由として情報の集積効果が挙げられます。たとえば、企業は法令や制度を巡って何かと中央省庁などと連絡を取る必要がありますが、中央省庁は東京にありますので、東京に優秀なスタッフを置くことが今後の戦略を立てる上で有利になります。また、東京は日本における金融の中心地です。東証のある兜町日本橋周辺には証券会社や銀行が集積していますし、港区には外資系の金融機関も存在しています。グローバル経済の中で外資との提携や緊密な協力は必須になっており、東京に本社機能を持つ方が世界企業として躍進*1するためには有利です。

では一極集中が果たしてよいかと考えると様々な問題があることが見えてきます。日本はプレート境界に位置する国。地震が多いことで有名です。首都圏への一極集中は災害や大規模テロ発生時のリスクをヘッジできません。サーバーはバックアップを遠隔地に分散させていることも多いですが、本社機能がストップすれば企業経営に多大な影響が出ます。

これらのリスクを考えれば、規模の経済が活用できるように地方から都市へという流れは維持しつつも東京に全てが集中しないように配慮することが必要です。すなわち、これからの目指すべき国土像は一極集中でもなければ多極分散(国土の均衡ある発展)でもない、「多極集中」であることが言えると思います。ところが、現時点では東京一極集中が際立ちます。

本来、情報通信技術が発達したグローバル経済では本社機能はどこにあってもいいはずです。ネットによるミーティングで取引は十分成立するからです。現にアメリカでは本社機能はあちこちの州に分散しています。しかし、日本では企業経営者は「大阪にいると情報が入らない」と言います。大阪の情報インフラが脆弱なのでしょうか?郊外も含めてブロードバンドが各家庭に入っている時代、私は決してそうではないと思います。

では、何が大阪と東京の情報格差を生み出しているのか・・・。私は2つの大きな要素があると思います。

  • 規制行政によって中央省庁が強大な権力と情報を握っており、規制業種は中央省庁の近くで仕事をする必要がある
  • ITによって大概の情報は入手できるようになっており、むしろface to faceの信頼感やインフォーマルの情報が重要になっている

1番は日本全体の活力低迷と多様性喪失の原因にもなっているだけに早急な改善が必要です。規制緩和道州制の導入を進める必要があります。地方が総力を結集すればこれは打破できるでしょう。
2番は確かにこれは納得できるのですが、では逆にアメリカではなぜ本社機能を地方に維持できるのでしょうか?アメリカ人はface to faceを重視しない?そんなことはないと思いますけどね。むしろ、案外欧米の方がコネ社会だったりすることも多いようですが。

正直、これについては僕には分かりません。なぜなのか・・・確かにアメリカでは日本に比べるとテレビ会議が多いようで、ITを活用してface to faceを代替させているという可能性は高い。しかし、face to faceにはテレビでは伝えきれないものもあるでしょう。いわゆる日本人でいう「空気」と呼ばれるものです。また、日本ではアフターファイブが家族中心ではなく取引先とのノミニケーションが一般的であるため、ノミニケーションで多くの情報が得られるという理由も考えられはするのですが、決定的な要素とは言い切れません。どなたかご教授くださるとありがたく存じます。

ともかく、これからのあるべき日本の姿は多極集中であることに間違いはないと思います。規模の経済しか見ていない一極集中は発展途上国の手法、平等主義の多極分散(国土の均衡ある発展)は机上の空論です。本当に必要なことは最適な規模の経済を探り、同時に多様性の創生を両立させること。そのためには都市化と多極化をさらに進めていかねばなりません。

そのためにも大阪の企業には本社は大阪に残してもらいたいものです。

*1:日本企業でもグローバル系企業は成長を続けているにもかかわらず、国内中心の企業は低迷しているというデータがある