「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」の感想

今日中に返却しないといけないので簡単に感想を。
経済書ベストセラーですが、中身はまるで論文のようです。経済学や統計学を勉強していないと意味が分からないところがたくさんあります。こんな難しい本がよくベストセラーになったなぁというのが正直な感想でした。脚注だけでも相当の頁数があります。じっくり読み込んだらもっと面白いのだろうなぁと思いつつ、予約が詰まっているので延長はできません。
内容についてですが、「デフレ克服が景気回復につながる」という主張の問題点やいわゆるアメリカがどういうカラクリで90年以降成長を続けてきたのかということがデータなどを用いてよく示されていると思います。また、逆に日本でなぜ賃金が上がらないのか、その理由についてもよく分かりました。アメリカの住宅バブルが5年と持たないだろうという統計データからのテクニカル・マクロ観点からの分析はサブプライム問題を予期しているようでした。世界は今後、帝国化するであろうという予測は現実からも解離していません。
ただ、ちょっと疑問の余地があるなと思ったのは近代の国民国家が解体し、「新中世」の時代が幕を開けるという点でしょうか。国家という枠組みが消えていく中で、革命やテロという反乱の仕方を知っている現代の市民が果たしてそのまま新中世を受け入れるか、新中世が維持できるのか、疑問が残ります。そのほかにもデータを用いない部分でところどころ論点に粗さがあるように思いますが、概ねしっかりと書かれている書籍と考えていいと思います。