ニコニコ世代

文化祭の2日目。朝7時に到着。小レイアウトのコントローラが不調で予備がないと言うので、先日共立でたまたま買って昨日半田付けしたコントローラキットを接続してみる。非常にスムーズな制御。HブリッジDCモータドライバのTA7291Pはなかなか便利かもしれない。特にVref端子で印加電圧を調整できる点。ただし、電圧を落とした分はICから放熱してしまうらしいので、放熱対策が重要かもしれません。まぁそれはトランジスタ式にも言えることなんですが。PWM制御にも使えるのかなぁ?昔は大電流用のTA7257Pばっかり使っていましたが。結局、予備のコントローラが見つかったらしく、それで十分だったとのことですが、鉄研の線路を使ってコントローラの評価をさせてもらいました。

8時ごろも部長は相変わらず模造紙を作成中。部屋を巡回していると緑のアクリル塗料が床に染み付いている箇所を発見。部員は線路磨きで精一杯の様子だったので、シンナーとアルコールを使って、汚れ落とし。今年は3箇所ほどそういう箇所があって、例年より多かったので来年以降は注意してもらわねばなりません。基本的にアクリル塗料は乾いてしまうと扱いにくいですからね。落としたらすぐに拭くという習慣をつけてもらいたいものです。

8時半からは部員たちは点呼に行ってしまったので、他のOBとグダグダとだべっていました。9時に開店できるのかなぁと思ったのですが、まだ線路に不調な箇所があるというので結局9時15分に開店することに。その間、外で待っている客で人だかりができていて、教室から出入りするたびに「まだ〜?」「もう9時でしょ」とか言われるので、「努力はしているのだが最終調整で少し開店が遅くなりそうだ」ということを説明しました。一人、さかなクンみたいなハイテンションな小学生がいて、なかなか対応に苦慮しました。部員は技術的な仕事に没頭している間に、暇なOBは接客と。こういう分業もいいと思うんですがね。現役の時はとにかく動かすことしか頭になかった一方、OBになって一段引いて見渡してみるとどうやって見せるかとか、接客がいかに大事かという視点が入ってきます。

9時15分に開店すると一瞬でレイアウトの周囲が客で埋まりました。恐るべしです。客が入ってしまうと、OBは邪魔なので隅っこへ退避。グダグダとした会話を続けていました。9時30分ごろから大レイアウト内に入って部員と一緒に運行の手伝い。さすがにOB4年目になると車両に触って脱線修復とかをする気はないのですが、電気班謹製のコントローラーを操作したり、運行形態のアドバイスをしたりしていました。

10時ごろから大学の友人を呼んだので、住吉まで迎えに行きました。その後はほぼ全ての展示を案内。友人曰く、人の多さとカネのかけ方に驚いたとのこと。今年はミリタリー研究会などもあって(実は半分ガンダム)、随分と楽しんでいただけたようです。12時頃まで案内した後、12時半からは中高の同級生で、医学部生2人と工学部生1人で食事。近況報告などを行いました。

14時から職務に復帰。今年はかなり上のOBの方が来ていらっしゃったようで、しばしのお話を。5年上の先輩からは関係者であることを示す身分証明書を自作して、学会参加証のようにぶら下げている様子を見て「いい加減卒業しようよ〜。放っておくのも大事やで〜」と忠告を受けました。ただ、僕としては大学の全学にも医学部にも鉄道や電気系サークルがなく、そういう作業に参加する機会が皆無であること、仲の良い後輩が部長をしていることなどから、やっぱり今年までは手伝いたいんですよね。来年以降はさすがに知り合いも少なくなるし、私もBSLに入るはずので、あまり関わる気はないのですが。あと、OBが来ると現役部員がその接待や会話に追われてしまって、人員を割かれることになる(=OBが邪魔している)ので、その罪滅ぼしの意味でも卒後3〜4年は手伝ってあげるべきじゃないかと個人的には思っています。ちなみに自身の身分証明書を作っているのはOBが立ち入り禁止区域に出入りするとき、観客に「一般人が勝手に入っている」と誤解を与えないようにする目的です。それだけ客の数が猛烈です。最も忙しいときは満員電車並みの混雑率になりますからね。

そうこうしているうちにあっという間に3時半でお片付け。ここからはOBと現役が力を合わせてチームワーク力を発揮する時間です。いままでグダグダしゃべっていたOBも片付けに参加します。総人数30人。だいたい第一展示室担当が25人、第二展示室が5人という人数配分で片付けます。

第一展示室(大レイアウト)ですが、まずは、ボード上に散乱した私物車両の片付けで10分。次にボード上にある一時的な構造物の撤去とボードの解体。ボードは14枚の組み立て式になっているので、留め金を外して部室に撤収すればそれで完了。構造物(ストラクチャーや橋脚、ホーム)に関しては大まかな種類別に分別して箱に放り込みます。同時に電気系統の配線も撤去します。これが約15分。次に使用していた机と教壇を元の教室に返すのに15分。さらに別の複数教室に移動していた机を探し出して、上の階に引き上げたり、上の階から下ろしてきたりして運び込む作業、そしてそれを教室内に並べる作業で20分。そして、間違った机を運んでいないかとか、足りない机はないかというのを確認して問題があったら(毎年机椅子が1、2個足りなくなる)、それを手分けして各所に探しに行く作業で20分。最後の作業は一部の部員だけでやっていますから、実質的にわずか1時間できれいさっぱり片付いてしまいます。

第二展示室の方は人が少ないこともあり、模造紙や部誌の撤去と、パソコンの終了、プラレール車両の撤去で15分。小レイアウトと関連物、プラレール線路、パソコンの撤去で15分。教室の掃除で5分。机の運び込みで20分。こちらもだいたい1時間以内に片付きます。

いつも後になって考えるととんでもないことをやっているなぁと思います。あれだけ大規模にレイアウトを展示していながら、展示系クラブの中では最も撤収が早い。文化委員からは喜ばれている存在だそうです。まさにチーム力。普段はOBと現役が協力するという環境はあまりないし、中1に至ってはOBとの面識さえないにも関わらず、協力できるというのがまたすごいことです。しかも、別に誰かが指揮をしているわけではないんですね。次やらなければならないことに気付いた人が声を上げて、「〜してくれ」と言うとOB現役関わらずその作業を遂行する。結構、力仕事もあって、教壇なんかは二人一組でしか運べないのですが、「誰か来てくれ」という前に誰かがやってきて組ができてしまう。OBや現役同士が組になっていることもあれば、OBと現役が組になっていることもあります。机椅子の作業もチームワークです。工作室という地下一階の部屋に40個程度の机椅子(机と椅子が接続されて一体化したもの。加古川刑務所作成の木製のもので12kgぐらいはある?)が置いてあるのですが、これをバケツリレー式で引っ張り上げます。4人ほどが工作室で数ある机から該当の机を探し出し、次の人に渡します。次の人はそれを教室の出口までもって行きます。さらに次の人はその机を10段ほど上の階段の踊り場まで引き上げます。そこからは2人が待機していて、20段ほど上の地上階まで交互に引き上げます。上には5人程度がサイクル式に待機しており、引き上げられた机を100mほど先の教室まで一気に滑らして運びます(下が石でできているので傷がつかないし、滑りやすい)。教室の入り口には1人待機しており、運び込まれた机を教室内に放り込みます。教室内には2人待機しており、配置図に従って机を並べていきます。16人でやってしまうので、40個程度の椅子は7分ちょっとで教室に収まってしまいます。そんなわけで、気付いてみると4時半ぐらいには教室がほぼ元通りになっているという状況です。

こんなクラブは珍しいでしょうね。OBと現役が総動員されて一気に片付けてしまう。実は公式にOBを動員するようになったのは僕が実質部長だった頃からのようです。それまでは一部の物好きなOBが右往左往している中学生に指示を出したり、机の運び方を指南していたりしていただけだったのですが(そのため片付けに1時間半以上かかっていた)、僕と幹部が点呼とグランプリ賞の表彰式で片付けの指揮を取れなくなる間、15年ほど上のOBの方に片付けの指揮をお願いしました。それ以後、なぜかOBは現役と一緒に指揮や肉体労働をするという伝統ができあがってしまいました。挙句の果てには顧問の先生が公式にOBとなった僕に片付けの指揮をするように指示を出されたこともありました。昔は実働人員が20人もいなかったのに、今は30人以上いるのですから、当然早く終わるわけです。まぁ、自分のときに「OBも一緒に働く」という伝統を作ってしまったのですが、自らがOBになったときに働くのはある意味当然の義務かもしれません。

さて、片づけが終了に近づくと決まって中学生を発端としたお遊びが始まります。昨年はチョークの投げ合いかなんかで、せっかくきれいにした教室を汚したのでOB数人で注意しましたが、今年は砂が少し入った風船をバレーボールのようにして、部員全員で継げるというゲームでした。まぁ、風船が割れたら教室が汚れますが、割れない間は全く許容範囲なので僕も参加してました。ある意味、これもチームワーク。30人以上がゲームに参加していますからね。風船が落ちそうになって誰かが、必死で跳ね上げて、それを別の人が打ち返す。ドッジボールで当たった玉を同胞が受け止めるというような、そういうプレーも何回かありました。中1なんかは特にはしゃいでましたね。

ゲーム後に、時期部長選挙の投票、OBの自己紹介が終わった後、前顧問(僕らの時に顧問を務めた終身名誉顧問)の先生が挨拶。現役世代の20年以上上のOBが来ていたのでそのときの思い出話をされました。次に去年から就任した現顧問・副顧問の挨拶。ところがなぜか二人とも呆れたような顔。話の概要は「準備の様子はあまり見ていなかったが、今回は片付けの様子を見させてもらった。君らが先輩の協力も得ながら全部自分らでテキパキと活動を進めているので、今後は私たちが監督しなくてもいいような方向になっていただけると有り難い。先日新聞がうちの部に取材に来たときも、『この活動は先生が指導してこうなったのではなく、生徒が勝手にやっているところがすごいのです』と言った。この伝統を続けて欲しい」

文化祭準備期間中に領収書を出しまくったせいで怒っていらっしゃるのか、OBも巻き込んだ怒涛の片付けにびっくりされたのか、現役とOB合わせて40人の大所帯を見て鉄研旅行の引率を思い出されたのか、それともそもそも部員とOBだけで教室が一つ埋まってしまうという実状に驚かれたのか、私にはなかなか真意がつかめなかったのですが、片付けについては評価してくださっているということは読み取れました。

6時になったので、毎年恒例の打ち上げへ。大多数は阪神で三宮へ向かったようですが、私は15年上のOBの車で三宮へ。私は公平な立場の人間として部長選挙の選挙管理委員を現部長から任命されていて、投票用紙を運搬するという役割もありましたので車の方がベターでした。

一次会が終わった後、三宮の東遊園地へ移動。せいぜい打ち上げに来るのが20人程度だった頃は三宮のバスターミナルの空き地を使って円陣を組んでいたのですが、今年は40人近い大人数なので三宮のど真ん中で集まるわけには行きません。東遊園地で自己紹介の続きと三本締めをして終了。二次会は例年通りカラオケだったわけですが、今年は歌う曲に非常に特徴が出ていました。

例を挙げますと、「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」「エアーマンが倒せない」「創聖のアクエリオン」「鳥の詩」「God Knows」「レッツゴー!陰陽師」・・・というわけで、この世代はいわゆる「ニコニコ世代」なんですね。かつて我々が中学ぐらいだった頃には、「宇宙戦艦ヤマト」だとか「エキセントリック少年ボウイ」など、今となっては古典的なアニソンやコミックソングが流行ったわけですが、最近は東方や二次元の系統が非常によく流行しています。おそらく、鉄研内では僕らぐらいがこの辺のネタが通じる最高年次かと思います。

しかし、東方を知らないと今の世代とは楽しめないかもということもつくづく感じた一日でした。