パチンコ産業に例える危うさ

医療崩壊ですぐに医療はパチンコ産業と同じ30兆円規模であると比較されますが、この比較の仕方は非常に誤解を生みかねないやり方であるということを最近常々思っています。
なぜ危険なのか。まず、ギャンブル産業は「賭け事」であるために客一人が一度に使う金額が大きく、金額面での産業規模が実体面での産業規模以上に大きく感じられることになります。実際、読者の中には勢いで一晩で10万円近くすってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。さらに、パチンコ産業の場合、30兆円というのはあくまで貸玉料の合計が30兆円であるにしか過ぎません。8割以上は払い戻されて顧客の手に戻るわけですから、産業のもたらす付加価値としては5、6兆円ぐらいの規模にしかならないわけです。一方、例えば自動車産業では原材料→素材→部品→製品の順に、町工場なりトヨタの工場なりで付加価値がつけられて百万円以上するお車になっていくわけですから、自動車の総売上の大部分が自動車産業による付加価値と考えることができます。常識から考えても分かるように多くの産業というは後者に属しています。ギャンブル産業というのはこのように実体と金額が解離した特殊な業界なのですから、産業比較において、あえて何も言わずにパチンコ産業を出してくるということは、その比較自体が恣意的で不適切なものであるということを自ら宣言しているようなものです。経済を少し知っている人ならば、こういう比較が無意味でトンデモであることはすぐに見抜くでしょうし、下手をすれば比較を出してきた医療側の信用問題にもなりかねません。

では、正しい認識をしていただくために他の業界のおおまかな規模をお示しします(評価の仕方によって数字は若干異なります。基本的に売上や市場規模を見ていると考えてください)。

日本の主要産業である自動車産業(関連産業含む):45兆円ぐらい
テレビや町中で目にする広告業界:5兆円ぐらい
産業のコメ、鉄鋼業:20兆円ぐらい
誰でもどこでも外食産業:30兆円ぐらい
日本の情報社会を支えるITサービス産業:15兆円ぐらい
いつでもつながる通信業(放送含む):20兆円ぐらい
日本の代表産業、電気機械産業:45兆円ぐらい

この辺から考えると、国民医療費は外食産業ぐらいとするのが妥当でしょうか。