自由診療へ

公衆衛生ではどうしても医療制度の話題が出てくるわけですが、同級生と医療制度に関して会話をしていると「国民皆保険に疑問を持っている」という学生が結構いることに気付きました。皆保険制度を嫌う理由は様々ですが、財政面で皆保険維持に懐疑的な人もいれば、「オレは自由診療でガッツリ儲ける」という人もいてなかなか興味深い限りです。混合診療に関しても、現行制度では保険外診療が入ると保険対象治療も全額自己負担になることに対して「こんなの常識から考えておかしいやん」と憤りを表す人も多かったです。

私自身は皆保険は公衆衛生上の観点からも守るべきだと思っていますが、混合診療に関しては先進医療や医学の発展という観点から、ある程度までは推進していくべきだと考えています。

僕が冗談めかして「医者を開業医も含めて全部国家公務員にすれば医師不足や偏在問題もある程度解決するんじゃない?」というと、「あ〜なるほど」という声も出る一方、自由診療派からは「そんなの絶対反対」と総スカン。まぁ国家公務員になると労働基準法の適用もされなくなりますから、私もそういう動きが出てきたら反対するか、全国家公務員にも労基法を適用するよう求めますけどね。

でも、医療界からは医療は公益事業ではなく「公共」事業であるという意見が出されている以上、「じゃあ医師は全部国家公務員」という話が出てきてもおかしくはないでしょう。医師法17条で「医師であって、国家公務員または国家公務員に準ずる者でなければ医業をなしてはならない」と規定すればいいだけですから。すでに医師である人間に対しても国家公務員になるよう強制はしていませんので(ならなければ医業ができないだけ)、おそらく憲法の「職業選択の自由」にも違反はしないのではないでしょうか。そうでなくても「公共」の福祉のためならば、職業選択の自由は制限されるのですから。さあどうなることやら。

しかしながら、若い世代の中にはアメリカ型の医療制度を強く望む声も大きいということがよく分かりました。あれだけ非難を浴びているアメリカの医療制度ではありますが、臨床教育が充実していたり、市場原理による自動調節機構が働く、というよい面もあるわけですから、感情論で議論せずに、どこが良くてどこがダメなのか、もう少し客観的に評価した方がいいように思います。