医学部もマネジメントの授業を入れるべき

日経で「ザ厚労省」と題して舛添大臣にインタビューしていました。もう、「その通り!」と思えるところがたくさんあったので一部引用します。

―なぜ厚労省の政策に混乱が目立つのか?
小泉改革のマイナスの側面がでてきている。競争と安定のかみ合わせが悪くなっている。抜群に才能を持っていて健康なスーパーマンみたいな人でも60歳をすぎて病をわずらって寝たきりになる場合もある。一人の人生にはいつ光りが差し、影が差すか分からない。厚生労働省は影の部分を手当てする役所。市場経済原則から落ちた人を救わなければいけない。

なんか、私の同級生の中には年金すら不要という人まで結構多いのですが、年金を無くしたとしてちゃんと老後や障害に備えて貯金を出来る人が全人口の何人いるかということを考えれば、年金はあったほうがいい。年金なんてなくていいなんて言えるのは、自分が若くて健康であることを無意識のうちに忘れているからじゃないかと思います。

―そもそも日本では負担の議論が入り口で止まってしまう。
一部の厚労族議員が政策をまとめるプロセスは変わってきた。薬害C型肝炎問題も政治主導で決断した。首相が安心プランをきちんとやるから消費税を上げますと言っても選挙に負けるとは思わない。む しろ逃げたほうが政権を失う。おれは参院議員で選挙が無いから気楽だとの批判も受けるが、国民は変わってきている。
消費税5%で、世界最高の長寿国になっているのは奇跡。だがもう無理だ。だからこのまま長生きしたいなら6、7、8%と税率をあげていくしかない。

「安かろうよかろう」という安易な姿勢を日本人が取り続けた結果、農業も漁業も医療もみ〜んな崩壊してしまいました。これからは「安かろう悪かろう」か、「高かろうよかろう」の二者択一しかありません。

―舛添厚労相はテレビメディアに批判的だ。
みのもんた氏など代表的なテレビの顔に有権者 がマインドコントロールされてしまっている。政治がそれに乗ったら大衆の喝采を受けるかもしれないが、悲しむのも大衆だ。例えば年金機構で民間人を 1000人採用することになっているが、自民党は2000人に増やせという。だが一気に2000人もとれないだろう。足りなかったら結局、年金業務が行き詰まる。知識の無いアルバイトを雇い、記録問題にあたることになる。泣くのは国民だ。自民党は選挙受けするために主張しているが、私は国民一人 ひとりのためにやっている。選挙に勝つか負けるか議論を進めるのはレベルの低い話だ。それは民主党にも言いたい。合理的に考え、政策にならないのが政治と もいえる。だが政策実現までには正論を吐かなければだめだ。テレビ民主主義にはそれがない

まさにその通り!国民は騙され続けている、政府ではなくマスメディアに。マスメディア自体は資本の論理で動いていて変えられないのだから、情報を受け取る国民が賢く変わらなければならない。

厚労相が「役人に丸め込まれている」との批判もある。
もちろん小泉純一郎元首相のように抵抗勢力をつくったほうがいい場合もある。ただ本当に物事を動かそうとするなら協力したほうがいい。在任わずか10カ月の大臣よりも20年間働いた役人のほうが専門知識があるのは事実だ。これを使わない手はない。レールの方向性は大臣が決め、みんなで押せばいい。

同じことは現場と厚労省の間にも言える。結局、医療をよくするためには医療の現場でピンポイントで頑張る医師と、それを全体的視点から調整する役所との連携が欠かせない。感染症対策一つにしてもそうで、現場の医師にはワクチンを打つことは出来てもカネがない人に助成金を出すことは出来ない。医師だけでは感染症を防ぐなんて到底不可能。「厚労省の役人は椅子に座ってエロ本でも見てればいい」とブログに書いている医師がいたが、本質を理解していないとしかいいようがない。確かに役人は色々制限をかけてくるのでムカつくかもしれないが、彼らがいなければさらに混沌とした状況が待っているのは目に見えている。私は厚労省と医師会、現場の医師すべてが協力できる世界を望んでいるし、それが将来の医療の適切なあり方だと思う。むしろ、そういう体制を作りたくないのならさっさと医療界を退場するべきだと思う。

最後に一つ気になる部分を
医政、健康両局長はGHQ(連合国軍総司令部)のときから医師が就いているが、行政官として優れているとは限らない。文官がなってもいい。ただその下には医者がいたほうがいいかもしれない。そういう見直しをやる。省改革の発端は年金記録問題と後期高齢者医療制度だが、私の問題意識はそれ以上だ

官僚組織の中では階級が意味するものは大きい。現場や医学のことを知っている技官の意見がピラミッド構造の中で反映されにくくなるとすると、あまり好ましくない事が起こる。確かに必ずしも医政局長、健康局長は技官でなくてもいいと思うが、官僚のピラミッド的な体質を抜本的に変えることも同時にしなければ国民の健康に害が及ぶ。さらに言えば、技官だからこのポストまでという制限も廃止すべきで、優秀な技官であれば事務次官になることがあってもいいと思う。
今後そういうように厚労省が改革されるのであれば、医学部教育のあり方も変わるべきだろう。医学知識とマネジメントの両方の能力を持った人間が一定割合輩出され、行政で働くことができれば、「無策」「意味不明」といわれていた健康行政を変えることができる。一方で、医学部・医療界からそういう人材を輩出しなければ「現場なんてどうでもいい」と、経費削減に躍起になる文官に主要ポストを独占され、さらに医療改悪が進む。医学部でも医療知識だけを教えるのではなく、一部の学生に対してはマネジメントの専門教育も行っていくべき時期に来ている。