制服組が来る医学会

今日は個人的興味で集団災害医学会に行ってきたのですが、災害医療ということで制服組の自衛官が何人か来ていました。在日米軍士官の講演があったからかもしれません。
自衛官というのは肩のワッペンを見ると階級が分かるようになっていて、見ていると来ているのは2佐以上の士官が多かったように思います。米軍士官の講演ではこれから質問する内容(IEDという即席爆弾と負傷について)を会場に分かりやすく日本語で解説してから、英語で質問した自衛官がいて、肩を見ると桜4つでした(=幕僚長)。
あとは、福知山線事故の心理ケアの話が興味深かったのですが、一般的な被害者ケアに比べると「加害者が刑事責任に問われにくいことによる心の葛藤が大きい」というのが特徴であるという指摘や、「遺族のケアは負傷者のケアと比べると何十倍も難しい」という最後の一言が印象的でした。私はとあるシンポジウムの後で信楽事故と福知山事故の遺族に直接「刑事処分は必要と思うか」と聞いてみたことがあるのですが、表面的には「遺族によって大きく異なる」というのが結論でした。ただし、当然心の奥底では刑事責任の追及を望んでいるであろうことは、よく読み取れました。

医療事故に関しても医療側からは「刑事はありえない」という声は大半を占めるわけですが、実際のところはそれは(日本人、日本文化のスキームでは)遺族に相当な心理負担を強いることになるわけで、一部医療側の主張する完全刑事免責の制度を作ったとしても、その後生じるであろう反対的な世論の高まりであるとか遺族による国会議員への陳情等を考えると、そういう制度が長期的に維持可能なのかという点については非常に疑問です。

その点では、まず医療者側に「ほとんどの医療事故では刑事には問われない」「警察のようにあら捜しはしない」というメッセージを出すと同時に、遺族側にも「第三者がきちっと検証する」「酷いケースでは刑事処分もありうる」というメッセージを発信しないと、双方がそれなりに納得できる制度というものは作れないだろうと思います。厚労省の医療事故調案はそういう視点で見ると、細かい部分に問題は残るとはいえ、「収まるところに収まったな」というのが率直な印象です。