新臓器移植法案成立の謎

先日から何度か話題に出している臓器移植法案ですが、どう考えても腑に落ちないところがあるんですね。それは法案そのものというよりは、むしろ法案に対する医学界の反応です。

「A案」に賛成は46学会―日本医学会
臨床系の学会の実に多くが、今回の法案に賛成する趣旨のコメントを出しています。上の記事によれば、回答があった64学会のうち46学会が賛成ですから、単純に見積もって医療界の70%がA案に賛成していたわけです。

ところが、周囲のドクターにこの法案に対する意見を聞いてみても、積極的に賛成する先生方は半分もいない、というのが私の印象です。むしろ、疑問が残るであるとか、現場は混乱するであろう、といった否定的な意見の方が目立つ気がします。
医師の多くは決して積極的に賛成しているわけではないのに、なぜ医学会という医師組織が高率で積極的な賛成の態度を示すのか・・・。ここには、一部の幹部が学会の運営指針を決めているという、医学会全体に横たわる根深い問題があるのと同時に、彼らに対する強力なロビー活動の存在があるのではないか、という疑念が強く湧き上がってきます。

そして、医師かつ国会議員である人々、いわゆる医系議員の賛成状況。これもかなり違和感を感じます。
自民、民主の医系議員のほとんどは移植推進派なんですね。参議院は押しボタン方式なので、賛否状況がよくわからないのですが、衆議院に関して言えば今回の法案に反対または棄権したのはごく少数。果たしてそんなに医療関係者の多くがこの法案に賛成なのか?ということを考えると、これまた圧力団体のロビー活動の存在が強く示唆されることになります。実際、この問題をずっとウォッチしてきた方々は、かなり強力なロビー活動があったとおっしゃっています。

そう考えると気持ち悪いですね。人の生死に大きくかかわる法案がロビー活動で決まるというのは・・・。

この法案に盲目的に賛成している人々に対して言いたいことは二つだけ。

  • 自分が(ドナー側、レシピエント側)両方の立場になった時のことを考えよ
  • 人の気持ちはYes、Noのような単純な原則では決まらない。常に「微妙」な状態があるということを念頭に置け。日本人は空気に弱い。

私はこの法案に関しては個人の死生観の問題というよりは、ある問題に対する想像力や思考過程の問題のような気がします。私ならこんな法案を議論するより先に、国連への支出金を減らして、人種差別的な方針を打ち出そうとしたWHOに対して圧力をかけますがね。(
中山氏が口癖のようにこだわる)グローバルスタンダードが決して正しいわけではないですし、それに合わせる必要性もないんですから。