政治主導の危うさ

医療界にも結構ウヨウヨといるのですが、官僚に対する被害妄想に感化された連中から「政治主導」という言葉が聞かされるたびに疑問を感じていたのですが、まさにそれを体現してくれているのが公共事業の「個所付け」問題でしょう。

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結局、支持者が集まるところにカネをばらまく、ということは自民党となにも変わらないということです。むしろ、それを見せしめのごとく露骨にやっている時点で自民党よりもひどいかもしれない。これを「政治主導」の名のもとに美化するとすれば、詐称、だまし以外の何物でもないですね。ばら撒きをある程度自認していた自民党の方がよっぽど正直でよろしい。

議員活動の盛んで二大政党制でもあるアメリカを見ても、「政治主導」がシステムとして成立するには「票」と「カネ」の裏取引が絡んでいるのは当たり前の話で(かつてNEJMの編集長が製薬業界と政界との癒着を指摘していましたが)、その額たるや一握りしかいない高級官僚の天下りの給料とは比べものになりません。官僚は特定地域に利益誘導したとしても自身にはそこまでの利益はないですからね(せいぜい特定の政治家にかわいがってもらえて、ちょっと給料が増える昇進が早まるだけ)。もし、本気で「カネ」の裏取引がない理想的な政治主導にしたければ、システムとしてすべての政治献金を廃止し、政治家を公務員のように国家からの給料(事務所費込で3、4000万ぐらいがいいかな)のもとで働かせるしかなく、最終的にそれは疑似官僚制度のようなものになっていくしょう。

国民が理想とするクリーンな政治主導はシステム面から考えても両立しません。政治主導である以上かならず汚い政治になります。クリーンさを求めれば、官僚主義的になります。このバランスをきちっと取らないと後で大変なことになるでしょう。「何事も政治主導はよくて、官僚主導はダメだ」と考えるのは思考能力のない人々の考えることです。

正直、私から言わせてもらえれば医療費が多少減ってもいいから、日本を金権政治にぶち込み将来世代に多額の負債を背負わすだけの「政治主導」はやめてくれといったところですね。望むところは官僚主導と政治主導を適切に組み合わせることです。高速道路やダムといった継続性も重要になる大型公共事業は正直、政治家には一切関わらせないことを望みます。日本全体の国土と交通の体形を考えてくれる優秀な官僚やシンクタンクに託したい。

比較的政治主導が向いているとも思われる社会保障に関しても、政治主導がかなずしもいいとは限りません。だいたい、今の医療崩壊の問題だって、政治主導で多額の金をつぎ込んで一番得をするのはこれから「お金とお薬ちょーだい」と言ってくる高齢化した団塊世代でしょ。「革新」と称される民主党の主要な支持層も、実はゲバ棒を振り回して非生産的活動ばかりしていた団塊だったりします。私の周辺の医学生も含め若い人は案外、民主党的には否定的です。団塊世代と医療をめぐる「カネ」「票」「政策」のシステム的裏取引は見え見えですからね。我々の世代にも医療崩壊による損失はありますが、費用対効果を考えれば医師法19条が完全にないがしろにされるぐらい一度完全崩壊した方がマシなんじゃないかと思いますね。

久しぶりに医療崩壊に対するホンネを言わせてもらいました。ちなみに私は静かに「第三勢力」になりつつある「みんなの党」の支持者です。