診療報酬改定で救急充実?

診療報酬が久々にアップになりましたが、いまいち狙いのよく分からない政策です。

小児科・・・小児科の診療報酬は人員がかかる割に若い親の負担を考えて一般的に低いことが知られているので、これは適切な政策だと思います。地方自治体レベルでは行われていますが親の負担軽減のためにも、自己負担の廃止や減額をもっと進めてもいいと思います。

産科・・・産科の崩壊の原因はやはり福島事件と慢性的な人材不足でしょう。最近は女性医師が多く、結婚や出産を機に現場を離れてしまうことも崩壊に拍車をかけています。正直、報酬を増やしたところで果たして崩壊が解消するとは思いません。むしろ家庭を持ちながら働けるように、女性産科医師一人につき1カ月10万円までの家事代行チケットを配ったり、24時間対応の保育所を充実させたりする方が大事かと。意外と産科志望の女子医学生は多いので、彼女らをリクルートすることが大事だと思います。あとは公安警察でも使って某団体の動きを封じ込めることも必要かも。

救急・・・救急の崩壊の原因はなんといっても割り箸事件でしょう。その辺の病院にいる一般の医師が救急を担当しなくなったのは、この事件と引き続いて起こった訴訟の嵐があってからのことです。救急は確かにコストもかかるので報酬増も必要ですが、根本的には業務上過失致死罪などの過失罪の適用を外す(検察審査会を通ったとしても訴追させない)ことが必要です。それがなければいま眠っている救急を積極的にやりたいという地域の医師は戻ってこないし、まだ少しだけ人を確保できている地域の中核病院にばかり負担がのしかかることになります。あとは主治医制の廃止とシフト制の導入などで、昼間と合わせた24時間以上の連続勤務をなくすことですね。ともかく、救急についてはお金だけで人が戻るとは到底思えません。医師の心情としては給料5割増しにするのと、連続勤務時間を原則18時間以下、最大24時間以下にして、業過致死罪や医療訴訟を完全になくすのとどっちを取るかと聞けば、結構な割合で後者と答える人がいるような気がします。後者の方が明らかにコストは安いと思いますが・・・。運悪く事故にあった人には無過失補償制度でそれなりの補償をすればよく、そのコストは年間数百億〜二千億程度で済むと思います。人間の命はどうしても一定確率で失われていきますからね。私も画面の前のあなたも明日には死んでるかもしれないんですから。次に生かせるなら原因究明は大いにしたらいいと思いますが、ただ後ろ向きに責任を問うだけなら、「しかたなかった」とあきらめる方がいいということです。何でも完全に人間の制御下におけると考えるのは、自然への敬意を忘れた行為だと思います。


外科・・・日本の外科の技術料は非常に安く、ディスポの材料費を引くとほとんど利益が出ないとも言われます。報酬増は当然でしょう。高額医療制度があるので患者負担はそこまで高くなりませんし、妥当なところかと思います。

診療所の報酬減については議論の分かれるところでしょうね。開業医も何かと他の活動に時間を割いています。学校医をしたり、救急当番をしたり、往診に行ったり、災害時の地域の医療分担を決めたり、地方では監察医のような仕事をする人もいます。私は開業医実習で往診に行きましたが、開業医ならではの多様性があってこそ、日本の社会はまわっているということを実感しました。やはり一律減というのもおかしな話です。開業医の利益は1000万円前後のところと2000万円前後のところで二峰性に分かれるともいわれますし、その辺を加味しながら報酬を上下させたらいいんじゃないでしょうか。

ということで小児科と外科については評価できますが、それ以外についてはもっと他にやるべきことがあるように思います。こども手当にしてもそうですが、カネだけで解決する問題ではないということを社会全体が認識する必要があると思いますね。