新型うつは勝手なのか?

前回のエントリで書いた新型うつに関する論考はなかなか自分なりにもいいものができたなと思っています。もちろん、全くのオリジナルではなく、内海健氏や斎藤環氏ら現代精神病理の専門家や中井久夫の書物等を参考に一部を組み合わせたり、自身の経験や自分の周りの様子を参考にしながら考えたものです。

さて、この理論を基にして考えるといろいろ批判を浴びている新型うつの「自分勝手な」特徴にも合理性があることが見えてきます。たとえばよく言われるのが下の三つ。

  • 仕事の時はうつで、遊びになると元気になる
  • 自責的ではなく他責的にとらえる
  • 規範に対して否定的

まず一番目については先日も書いたように気分が外因によって影響されやすくなっているため、一般の人には「ちょっと嫌なこと」でしかない日常の仕事が「すごく嫌なこと」としてとらえられてしまい、気分を落としこんでしまうのでしょう。
二番目については理解できない人も多いようですが、もともと彼らには現代社会においては絶対善とされる「空気を読むこと」「コミュニケーション力」を努力して磨き上げてきた結果、「外部環境によって規定される不安定な自己」を作り上げてしまい、それが発病の原因となったという背景が存在します。社会的にいいことばかりやってきたはずなのに、なぜか病気で苦しまねばならない羽目になったのですから、論理的に考えても「自分が悪い」というよりは「他人や社会が悪い」と考えて当然でしょう。そこには何の矛盾もありません。
三番目に関しては、もともと彼らの絶対的な価値基準は現代社会の風潮に基づいて明文化されたルールではなく、その場その場で変化していく空気に依存しています。すなわち、みんなが信号を無視すれば同様に無視するのが「マナー」であり、それに同調することが彼らにとっては善なのです。そこに明文化されたルールなどという第二の規範(本当はこちらが「規範」なのだが)が現れると、どちらに従っていいかわからなくなり、困惑のもととなるのです。当然、規範には否定的になるでしょう。

こうやって考えると新型うつの謎がうまく説明できます。本当に正しいかどうかは分かりませんが、一つの解釈モデルとしてこういう風に考えることも一つの選択肢でしょう。