児ポ条例についてひとこと

私は東京都が制定しようとした漫画児ポ条例には反対の立場です。表現の自由とかそういう問題もあるでしょうが、様々なオタク界と比較的親和性が高い立場の人間として、アニメや漫画、写真などのメディア上でさらされているわいせつな表現が、現実でのわいせつ行為欲求を抑止しているという側面を強く感じるからです。

そもそも、写真はともかく、実質的にそれを取得するために一切の害が生じないアニメや漫画までを東京都が規制する理由は一体何なのでしょうか。賛成派はこういうメディアが存在することで、現実に被害に会う人がいると主張しますが、一体何の根拠があってそういうことが言えるのでしょう?実際に中学生ぐらいを対象として援交やレイプをした人間を何百人も捕まえて、そういうメディアが影響したのか、有意差が出るように統計学的解析をした形跡はありますか?一切ないですね。単に「老人のたわごと」程度のエビデンスしかないわけです。

結局のところ、今回の規制の目的は女性差別云々(じゃあショタややおいはどうなるのか?)とか、そういうものに対して自らの中にある嫌悪感情を排除するという自己中心的な目的でしかなく、実際に被害にあう子供を減らすという目的ではないのです。もし、それが本当の目的ならば、もっと精神分析や心理学の専門家を集めて議論をさせるとか、数字をベースにした緻密な議論をするはずですからね。それすらまともにした形跡がない。

私はそもそも疑問なのですが、医学的に妊娠能力がない年齢はともかくとして、妊娠能力がある年齢については性行為や性的描写を規制する理由はないのではと思います。妊娠能力があるということは、逆説的に考えれば性行為をするのが人間本来の姿であるということですから(実際、昔の女性は15歳でも妊娠していたし、妊娠出産に耐えられないと判断すれば生理がなくなるわけですから)。同意がなければ成人同様のレイプとして扱えばいいだけの話でしょう。その点、12〜15歳程度を規制の実質上限値として設定している他国の制度・運用は非常に合理的だと思います。近年問題になる少子化対策のためにも、こういう性に対する規制は緩やかにしていくべきかと思われます。

あと、最近なにかと言われるゲームが現実と虚構を曖昧にしているという批判ですが、それって本当に正しいのか。犯罪例などでそういう例がクローズアップされやすいという現状はありますが、こういう連関を述べる際には数例の事件を取り上げても何も言えないということは、統計学の常識です。パワーが足りなさすぎる。何を言っても結局「たわごと」にしかすぎないのに、それを鵜呑みにする視聴者と国民。

今回の問題でもバーチャルがリアルでの被害を生むという議論がなされていますが、その稚拙さには辟易させられます。「萌え」系の人々というのは、意外と虚構と現実の違いには敏感なものです。虚構は虚構としてしか捉えられないからこそ、萌えられる。現実に虚構が入れば、ノンフィクションとしての面白みが減少するのと同様に、虚構に少しでも現実味のあるものが入れば、それこそ萎えてしまう。それゆえオタクに人気のある作品は往々にして「現実では絶対ありえないだろー」という設定ばかりです。その辺の議論については精神分析オタク文化に詳しい斎藤環氏がいろいろな本を出しているので、それを参照してみるといいでしょう。