医師を増やすということは

たぶんここのブログでは初めてになるであろう真面目な医療崩壊論で。

私自身は色々な医療崩壊のブログを見て、「医療はこのままでは崩壊する」というのを強く感じていましたし、それに自分たち医学生が何かできることはないだろうか、どうすればいいのかというのも、つい1、2ヶ月前まではよく考えていました。ただ、このような医療崩壊の議論の中で一つだけ私の気に入らないことがあったことも事実で、それは「医師不足」に関する項目です。厚労省は「医師は不足ではなく偏在している」と常に様々な場で言い続けているわけですが(そういう認識をもし本気で厚労省が持っているというのならばそれはそれで問題ですが)、だからといって「医師を増やせ」という議論はあまり私自身は好きではなかったというのが本当のところです。その理由は以下のようなものです。

  • 医療費の削減はどう考えても規定路線(そもそも今回の崩壊は医療費抑制政策に端を発している)
  • 医療費が増えないのに医師が増えれば、当然医師一人当たりの報酬は減額になる
  • ただでさえ割に合わない仕事なのに、これ以上収入が減るのは医師や医学生が望むところではない

したがって、私自身は全ての医師に短期間の僻地派遣を義務付けるというのは賛成です。しかし、地域枠は率直に言って反対です。というか増員自体が懐疑的です。やはり、今の医師が置かれている環境はあまりに不適切だと考えています。それまでの学歴や勉強の努力などを他の業種と比較すればもっと報酬をもらって然るべきだと考えられるわけです。市場原理から考えても診療報酬はより高いのが厚生経済的にも正しい。にもかかわらず、国の介入によりそれが低額に抑えられています。その状態でさらに医師が供給されれば供給曲線は右方シフトし、余計に価格が下がります。そんな馬鹿げたことはしてはいけません。もうフリーアクセスと皆保険はあきらめましょう。それさえあきらめればなんとか日本の医療もやっていけるのですから。

質を保とうとして体制そのものが持続しないのが一番問題である・・・ゴーイングコンサーンを死守できればそれでいいような気がします。