高学歴に多い発達障害

精神科を勉強しているとそれぞれの病気について「これって自分のこと?」と思えてくる節があって(特に単極性気分障害とか多い)、私の某親友なんかは「統合失調症」が少し当てはまるかも、なんて言っていましたが、個人的には人間ってものは、どこかに必ず心の異常を抱えているものだと思うんです。その逸脱度が大きいか小さいか、それで病気かボーダーか健常かどうかが分かれてきます。統合失調症(旧・精神分裂病)は大雑把に言って100人に1人がかかる病気。医学部1学年に1人いてもおかしくない。それほどcommonな病気ですから、その傾向がある人ならすぐ周りにいてもおかしくはないですね。(もっとも入学時の面接で明らかな統合失調症は弾かれるので、一般集団よりは少ないかもしれません)

僕の場合は最近は2週間続く抑うつなんかもないし、統合失調症や双極性気分障害の傾向もなく、安心していました。ところが、とある授業を受けて以降、診断基準はどうも満たさないものの、当てはまることが多すぎて、判断に戸惑う病気が一つだけあったのです。それが「アスペルガー症候群(AS)」というものです。

この病気は広汎性発達障害の一種で、知能の障害を伴わず、コミュニケーション能力や興味・関心に偏りや異常がある発達障害で、「自閉症の知的障害がないタイプ」という風に説明されたりもします。

これらの人々の特徴として

  • 他人の表情や心を読むのが苦手
  • 特定の「モノ(輸送機関・法律・コンピュータ・漢字・恐竜など)」や数字に興味が固執する
  • 規則を守ったり、正義感が強い
  • 感覚過敏(聴覚や触覚)

など、色々なものがありますが、必ずしもこれをすべて発症しているというわけではなく、対人関係は良好であるが、異常に数字に固執するとかそういうものがあります。

児童幼少期に発見されDSM-IVの診断基準で診断されることもありますが、軽症の場合は周囲も単なる「変わり者」として扱って、成人になって初めて気付くというケースも多いようです。

実はこの病気やこの病気の傾向を持つ人は、高学歴に多いのが特徴で、医者や官僚、法曹界、研究者、ITエンジニアの世界にも相当いると専門家は言います(病棟を回っていてASのドクターを発見するのは容易だそうです)。アインシュタインもASだったのではという説もありますし、ノーベル賞受賞者なんて大抵アスペルガー傾向だよ、なんておっしゃる先生もいます。

で、私の場合、どの辺がアスペルガー傾向に当てはまりそうか列挙してみると(注:ネットとかで調べたものを参考にしているので、間違っているのがあるかもしれない、なお、●はASっぽくない傾向)

コミュニケーション・対人関係

  • ●対人関係は決して悪くはない。友達は多いし、積極的に人と話すと自分では思っているが、1年に1、2回ほど人間関係上の大きなトラブルを起こす(ただし相手は周囲も疎む人が多い)
  • アイコンタクトがどうも苦手で目をそらしながら会話したり、それを取り繕うために、目を上に向けて考えながらしゃべっているように見せたり、会話中に別のものに目がいったりとか
  • ●一方で典型的ASとは違い、表情や声のトーンに異常に敏感で、ちょっとした動作で「嫌われたのか」とか悩む(一種の感覚過敏なのかな?)
  • ジェスチャーは多い方。むしろ小学校の時は過剰なほどだった。ただし、ものを説明するとき限定。感情表現には使わなかったなあ・・・
  • 自分の感情を言葉や表情で表現するのがとても苦手
  • たまに何気なく「本当のこと」を言う(教授にギャグを言われて、数秒考えた後「う〜ん、”少し”面白いです」とか)
  • 同年代が苦手で、年上や年下と付き合うほうが得意。教授クラスとのコネクションは学年トップだと思う。
  • 雰囲気が大人っぽいとよく言われる(大学院生ぐらいと気が合う)
  • 同年代でも初対面は必ず、慣れてきても5回ぐらい会うまでは丁寧語を使うので、「丁寧語は気持ち悪いからやめて」と言われることが結構ある
  • ごっこ遊びは「鬼ごっこ」はよくやったし、「掃除株式会社」を作って自主的に教室掃除を作っていた。でもママゴトは好きじゃなかったなぁ・・・。いつも周りで見ていたような気がする

興味・関心について

  • ●好奇心旺盛で興味は一つに固執することはなく、同一時点で2つぐらいあり、時期によって移り変わる。ただし、なんにでも興味を持つわけでなく、一定の共通点が見られる
  • 鉄道マニア、最近は飛行機にハマり、コンピュータ好き、法律や規則を読んだり作るのが好き
  • 数字の丸暗記は嫌いだが、∫とかΣがある数式を見ているとうっとりする
  • 規則や順番に関するもの、たとえば論理回路だとか、鉄道や航空の管制に興味が強い
  • 規則は破るものだと思っているが、遵法的に破りたい(あくまで規則には忠実)
  • 行動がパターン化している可能性は否めない。たとえば周囲に違う店があるのに同じ店で何度も食事する、電車に乗るときは常に同じ位置、体を洗う順番(頭→顔→体。こうした方が汚れを上から落とせる)、上の服は大抵ワイシャツ。また、電車が遅れると2、3分でも非常にストレスを感じる
  • 巷の流行には全く興味がないし、それについていこうとも思わない。少なくとも自分にとって面白くなければ、他人の流行に合わせる気はない
  • 一人っ子であることもあり、一人で遊ぶほうが気楽(趣味が合うのならその人と遊びたいが)
  • 従って、たとえ親友数人との漫談であっても、興味がないゲームやマンガの話になると、会話に一切参加せず、別のことをしたりその場を離れたりする(自閉傾向ってやつかな)

感覚について

  • 音韻を踏んだ駄洒落を連発しては周囲をフリーズさせる
  • 小学生の頃、トラックの排気ガスのニオイと、地下鉄やエレベータの中の鉄っぽいニオイ(わかる人は分かってくれると思う)が異常に好きだった。(それを小学校の教師に言うと、「嗅覚がおかしいんじゃないか」といわれた)今はトラックの排ガスは大嫌いだが、地下鉄のニオイは好き。一方でアパレル店の匂いは耐えられないので、服選びは今でも大嫌い。小中高の頃は10分いるのが限界だった
  • 寒い時は寒がりで、暑い時は暑がり。暑いと言ったり、寒いと言ったり、親がよく混乱していた
  • 聴覚は静かなときは敏感だが、会話中は聞き間違えが多い。静かな音楽(ヒーリングやフォーク)を好み、ロックやヘビメタは耳をふさぎたくなる
  • ●味覚は塩辛いのが好きだが、偏食はなく「栄養バランスよくエネルギー補給」が食事の大前提
  • 触覚は異常なしだが、他人に触られると大抵動悸がする。他人に触ったり手をつなぐのは好きだが
  • 霊感は強いほうかと・・・(おそらく温痛覚過敏なんじゃないか。ゾクッとすることが多い)
  • 派手な色やカラフルなものが嫌いで、地味な服が好み。虫はもとから嫌いだが、アゲハ蝶とかカラフルな蝶を見るとその場から退散。単色で小型のモンシロチョウやモンキチョウはまだ大丈夫。

身体症状

  • 昔から球技がとことん苦手(運動音痴)で、走ったりするほうが好き
  • どっちかというと不器用、だけど細かい作業に没頭するのは好き
  • 字は校長にたしなめられるほど汚かった(今でも汚いがだいぶマシ)
  • 緊張すると瞬きが極端に増えるなどチックとも取れる症状
  • 電車を待つなど暇でイライラすると、無意識に両手をぶらぶらさせている(常同行為)
  • 姿勢が悪くて、姿勢をよくするために剣道までやらされたが効果なし
  • 中学生の頃まで暇があればイスブランコをするクセがあって、ひっくり返ったり、畳がぼろぼろになったり、イスがガタガタになったり・・・(ロッキング?)。酒を飲んで意識が低下すると、明らかなロッキングが出ます。

好み・その他

  • 小さい頃は地図や図鑑を見るのが好きだった。小説(物語)はノンフィクション系や名作は好きだが、そこらのものは興味がないし、中学以降はあまり読んでいない
  • 複数の人物を同時に連想するのが苦手で、センター試験の現代文で小説がネックになっていたのは(毎回必ず1、2問は間違えた)、読んでも登場人物が把握しにくいためと考えられる
  • 昔の記憶がやたらよく、幼稚園や小学生時代の些細な失敗をよく思い出しては、頭の中がギャーとなる(いわゆるフラッシュバック)
  • 小学校の時は理論や理屈をこねまくるので「理屈の(本名)」と先生から言われていました
  • 回るものへの興味は特にないように思うが、ボールがレールの上を転がって落ちたり、反動で鐘を鳴らしたりするするカラクリの前では、昔は1時間以上動かなかったらしい。あと、小学校の時の記憶としてよく回転しまくって、目が回って倒れる遊びをしていたような・・・。
  • さっきやった自閉症スペクトラムテストでは33点でカットオフ値ちょうど


だいたいこんな感じでしょうが、特に社会生活に弊害がでるレベルではありませんし、むしろ年長者とのつながりがメリットになっているほどですが、やはりアスペルガー傾向が強いと自分では思います。父親もよく独り言を言ったり、CMのフレーズを繰り返したりするのでアスペルガーの傾向があるのかもしれません。

実は鉄道マニアの中には高率でアスペルガー症候群が存在することが分かっていて、私の中高の鉄道研究部の後輩でも私よりも症状が強く、アスペルガー症候群を強く疑わせる人が何人かいます。アスペルガー傾向なら数知れずです。そもそもうちの中高自体が、アスペルガーの宝庫といった感じで、3人に1人はアスペルガー傾向なんじゃないかという感じなんですよね。

巷ではアスペルガーは犯罪などとも結び付けられているようですが、専門家の先生も言っていましたが、それは全くの見当違いで、大抵は素直でいい子が多いのだそうです。私もアスペっぽい後輩を見て思うことは、トラブルを起こしたり変なやつだとは思うけど、彼らはみんないい子だということです。憎むに憎めない人が多いですね。成長するごとにアスペ傾向も減退しますし、経験でカバーしてうまくやっていけている人が殆どだと思います。僕自身も、彼らの能力に随分と助けられたことがありますし、どっちかというと印象はいいです。(だからこそブログに堂々と自分の障害の可能性について書けるのです)

ただ、一つ認識しておくべきことは「子供もアスペルガー傾向になることが多い」ということだそうで、それは覚悟しておく必要があります。まあ、親もアスペっぽい高学歴者なんてそこらにゴマンといますから、覚悟すら必要ないかもしれませんが。

正直、官僚なんかアスペにやってもらったほうがいいとおもいますね。他人の感情に左右されず、客観的に物事を見つめ、法という規則に従って粛々と仕事をする、これこそ官僚の本分です。そうじゃないと公平性は保てませんからね。他人の気持ちが読めないと官僚を批判する人もいますが、私はそれこそ官僚のメリットなんじゃないかと考えています。感情を読んで、官僚の仕事を修正していくのは政治家の仕事です。あ、窓口業務の場合は感情が読めるほうがいいかもしれませんが。

あと、最後に精神疾患と犯罪との関連について。
これは統合失調症を含め精神疾患一般に言えることですが、周囲が全く病気について理解せず、不適切な対応やのけ者のような態度を続けていると、どうも犯罪につながりやすいようで、結局は周囲が正しく病気を認知し、適切に対応するということが精神疾患による犯罪を減らし、社会を安定させる近道なのだということを世間は認識すべきでしょう。差別をすればするほど逆効果で、社会を不安定化させるだけです。